第33話 ロボット人間

 それから2週間が過ぎた、校内でたまに凪を見かけるけど何だか元気がなさそうに見えた。


 逆に何でオレはそこまで落ち込んでいないんだ。


 凪の事をそこまで好きじゃなかったとか?

 オレにはまだ恋愛は早すぎたか?

 恋に恋していただけとか? 

 じつは生まれつき恋愛感情が欠如している冷徹なロボット人間だったとか?

 そんな事を考えていたら自分がサイテーな野郎に思えてくる。

 もう当分は恋愛なんていらねえ、受験まで3か月きっているし勉強のほうを頑張ろう。

 そう思っていたのに―――。


         ◎


  放課後いつものようにシュウゾウの部屋でたむろっていたらケータイをいじっていたシュウゾウが突然話しかけてきた。

立春たつはる、今度の金曜の夜空いてるか?」

「特に、予定はないけど?」

「じゃあ参加決定な」

「へ?」

 シュウゾウはケータイで素早く文字を打ち込むと「はい送信」と真ん中のボタンを押した。

「何を送ったんだ?」

「今度の金曜ってクリスマスイブだろ? それでジュリと遊ぶ約束してたんだけどよ、なんかジュリの友達も一緒に来るみたいでよ」

「うん」

 ジュリというのはシュウゾウが中2の時から付き合っている1つ年上の彼女だ。


「その子の相手をしてくれる良い感じの人誰かいないかなって言うから、立春を連れて行くって送った」

「「「はあ!? なんでだよ!」」」

 ついゲンタとヨースケと一緒にハモってしまった。


「ヨースケお前は彼女いるだろ、ゲンタお前は……うん、なんかゴメン」

「なんかゴメンって何だよ」

「だって立春の方がカッコいいし、お洒落だし高校生に紹介するならその方がいいかなって」

「ふざけんなっ」

「ごめんて、今度ジュースおごるから」

「ジュースだけかよ」


 なんか勝手に話が進んでるんだが。

「ちょっと待って、オレいま彼女とか欲しくないし」

「べつに恋人候補を連れてこいって言ってるわけじゃねえし、テキトーに相手しとけばいいから」

「適当にっていわれても」

「その子も最近彼氏に振られて落ち込んでるらしいぜ、同じ境遇のもの同士でちょうどいいじゃん」

ってどういう意味だ? オレは別に落ち込んでないし」

「ハイハイ、言っとけ言っとけ」

「はあ?」

「とにかくもう決まったから、よろしくな」


 強引なやつだ。


 こういう話には一番に飛びついてきそうなリョウは何故か今日に限って無関心でベッドに寝転がってマンガを読んでいた。


         ◎


 クリスマスイブ当日、学校が終わってみんなと少し遊んだ後そのままシュウゾウとタクシーに乗って待ち合わせ場所のファミレスへ向かった。

 

 約束の時間は18時、ファミレスにはまだ女子達はきていなくて、シュウゾウと二人で水だけ飲んで待っていた。シュウゾウは椅子にもたれかかってリラックスしている感じでケータイをいじっていたが、オレはそわそわして落ち着かなかった。

 ジュリさんは同じ中学の先輩だったから何度かは会った事はあるけど直接話はした事ないしジュリさんが連れて来る友達の事は何も知らない。

 いったい何を話したらいいんだよ。


 時刻が18時20分を過ぎた頃、何だか騒がしい制服の2人組の女が店内に入ってきたと思ったらオレたちに気がついて「あっ、シュ~ゾ~!」ときゃぴきゃぴと小走りでやって来た。

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