第28話 初デート

 それから何度かなぎと一緒に帰る日があって、凪からの「手つないで帰ろう」の一言のおかげで手も繋げるようになって、休日には一度だけデートもした。

 雑誌に書いてあったほぼマニュアル通りのデートだ。


 凪が観たいと言っていた邦画の恋愛映画を映画館で観て、その後ゲーセンに行き一緒にプリクラを撮って太鼓をたたくゲームをしてUFOキャッチャーでぬいぐるみをとってあげてソフトクリームを食べて、色々なお店を見てまわった。


 雑貨屋さんで凪がちょーカワイイと言って見ていたブレスレットをこっそり買って、ファミレスで食事をしておごるつもりだったけど、「今日は奢ってもらってばっかりで悪いからここは絶対に凪が払う」と言って聞かないので結局オレが奢ってもらった。


 辺りも暗くなってきたころ、見晴らしのいい公園のベンチでくっついて座ってたわいもないおしゃべりをした。


 将来の夢の話になって、凪は東京に行ってアイドルになってその後は女優になりたいと言っていた。

 凪はすげー美人だから絶対になれると思った。

 オレは将来自分の名前のついた香水を出したいという話をした。

 トップノートがタイヤと草とメロンの香りで、ミドルがバナナと竹とタバコで、ラストがラムネとペパーミントと土の香りの香水にすると言ったら凪は笑いながら「いいね」と言ってくれた。

 

 そのあとサプライズでプレゼントを渡した。

 凪はこれ高かったでしょって少し申し訳なさそうにしていたけれど腕にはめてあげるとすごくかわいいありがとうと喜んでくれていた。

 それからだんだん話題も尽きてきて、静かな時間が続くようになって、ふと凪の顔を見たらスゲー見つめられてて、恥ずかしそうにしながらもオレの目と口をスゲー見てきて、自然とお互い近づいてその流れで瞼をとじてキスをした。


 そのあと凪をマンションの前まで送って別れ、オレは自分のアパートに帰り居間のソファにうつ伏せにダイブした。


 デートの間ずっと気を張っていたせいか何かスゲー疲れた。

 貯金も結構使ったしこんな生活を続けていたらすぐに破産だ。

 女の人と付き合うのがこんなに大変な事だなんて思ってもみなかった。


 仰向けになり天井を見ながら凪とキスした時の事を思い出してみた。

 外国映画でよく見るような情熱的で激しいやつじゃなくてくちびるとくちびるが軽くふれただけだったけど、初めての経験だったしすっごくドキドキしたし息も止めてたし、くちびるの感触とか味とかそんな事考えている余裕はぜんぜんなかった。

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