第48話 子供すげえ!
朝、じいちゃんとばあちゃんを仕事に送り出したあと、掃き出し窓の前で仁王立ちでに朝日を浴びながらバナナを食べていたら大きい荷物を肩に掛けたナツミ姉さんがノアとココと手を繋いで門から入ってくるのが見えたので玄関のドアを開けてやった。
「あっ、立春おはよう~」
「おはよう‥‥‥」
「ごめんね~急にお願いして」
「いいよ……」
ノアとココと目が合った。2人は何故かすごく嬉しそうに眉間をクシャッとしてニッコリ笑顔だ。
なんなんだこの可愛すぎる生き物たちは、自然と口角があがってしまう。
後ろに小さい鞄を肩から斜め掛けした小さい子がトコトコとやってくるのが見えた。
「ミチだ! ミチもきたのか!」
ミチは割り込むようにして玄関に入ってくると「はい」と手に持っていた物をオレに差し出してきた、手に取ったら柔らかいプラスチックでできた人形だった。
「おお、きょうりゅうだ、すごい、かっこいいな、なんで? どこから持ってきたの?」ときいたら「ブラキオサウルス」と返事した。
「スゲー! 名前も分かるのか! この恐竜、ブラキオサウルスっていうんだ」と人形をミチに返すとミチは褒められたことが嬉しかったのか照れたようにニコっとした、かわいすぎる!
「パパに買ってもらったんだよね~、この子最近恐竜にはまってるみたい、家でもずっと恐竜の本ばかり見てるよ」
「そうなんだ、で、今から保育園?」
「うんん、昨日保育園から帰って来たら鼻水たらして咳しててね、熱計ってみたら38度もあって」
「おぅ……」
「まあ食欲もあるし元気だし、朝は36度まで下がってたんだけど念のため今日までは休ませたほうがいいかなって。だから今日だけ預かってもらえる?」
「うん……」
「いちおう熱さましの薬はカバンに入れてあるから、もしまたあがるようだったら食事の後に飲ませて」
「わかった……」
「もう行かないと」
ナツミ姉さんは「はい」と大きな手さげ鞄をオレに渡すと「6時までには迎えに来るから、何かあったら携帯に電話して、じゃあお願いね~、ミチ、ノア、ココいい子にしててよ~ママ行ってくるね~」と慌てるように行ってしまった。
「いってらっしゃい……」
「「ばいば~い」」
門から出ていくナツミ姉さんを見ていたら「ガオー!」とブラキオサウルスが股間に突っ込んできて思わず「アウッ!」っとなってしまった。
「ミチっ!」
ミチはキャハハと家の奥へと逃げて行った。
「パーンチ!」再び股間に衝撃を受け「おふっ!」となって腰が引けた所に「カンチョー!」と今度はケツの穴を狙われ「ああッ!」と声をもらしてしまった。
「ノアっ!ココっ!」
ノアとココもウキャキャと笑いながら家の奥へトコトコ走って逃げて行った。
「いったい誰がこんな下品なことを教えたんだ……」
はぁ、騒がしい一日になりそうだ。
〇
鬱々としている日々が続いていたので子供たちに笑顔で接することが出来るか心配だったけど実際に会ってみたらそんなものはすぐに吹き飛んだ。
子供ってやっぱりスゲー、本人はただそこに居て自由にやりたい放題やっているだけなのに人の心を明るくする力がある。相手するのはめっちゃ疲れるけど子供たちの仕草や表情を見ていると自然と自分も笑顔になってる。
いちばんいたずらっ子のミチはオレのニット帽を何度も取ろうとしてきたが上手くかわして触らせないようにした、ミチ達も成長して色々喋れるようになったし記憶力も凄くなったからオレに耳があるなんて言いふらされたら困る、だから取ろうとしてくるたびに「帽子に触るのはヤメロ」「やめなさい」「取ったらダメだ」「さわるなああああ!」と何度も言いきかせてちゃんと躾けてやった。
お馬さんごっこやかいじゅうごっこをしたりおままごとをしたりテレビで幼児向け番組を観ながら一緒に歌ったり踊ったり絵本を読んだり庭でプール遊びなんかしたりしてあっという間に3週間は過ぎた。
ノアたちが保育園に入ってからもナツミ姉さんはよく預けに来ることがあって子供達3人を連れて公園に遊びに行ったり、スーパーに買い物に連れて行ったりもした。
3人ともわんぱくで砂をかけてきたり、走り回って逃げたり、水道でびしょ濡れになったり、抱っこ攻撃してきたり、パンツを脱がそうとしてきたり、タマやケツの穴を狙ってきたり、どこでも寝そべったり、あれもやりたいこれもやりたい、あれも欲しいこれも欲しいと駄々をこねたりとかなり振り回されて大変だったけど、同じく子供を連れて遊びに来ていた若い母親たちとにっこり会釈を交わしたり、おばさんには「元気があってかわいい子達ね、若いのにすごいわね、3人も面倒みるの大変でしょう?」なんて言われたりしてまるで自分が父親になったかのような贅沢な気分を味わうことが出来た。
会うたびに子供達の成長に驚かせられる、オレもぐずぐずしてはいられない。
通販で筋トレ器具のセットを注文した。
ちょっとやそっとじゃへこたれない強い体に鍛えて新しい仕事もみつけるぞ!
世界が素晴らしすぎて死にそう なし @infinite9
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