第40話 男子校
丘の上に建つコンクリート打ちっぱなしの校舎、教室を出ると外廊下になっていてだいたいいつも強い風が吹いている開放感のある学校だ。 開発途中の区域で周りはあまり建物もなく自然が多く見晴らしもいい。
草林中学からここに進学したのはオレひとりだけだった。
周りのみんなは中学からの知り合いがいてそこからだんだんと友達の輪を広げているなかオレは自分から積極的に話しかけに行こうとも思えずひとりでいた。ただし暗いやつだとか、かわいそうなやつだとは思われたくなかったのでいつも背筋を伸ばし胸を張って顔を上げて、孤独? それがどうしたという感じで堂々とぼっちをしていた。
それでもやっぱりぼっちは寂しい。
顔をあげていれば話しかけられやすいんじゃないかという期待もあった。
表情にも気を付けて仏頂面にならないようにした。
ぼっちでいるにしても心持は大事だと思う、自分の世界に籠り他人を拒絶しているようではずっとぼっちのままだ、来るならいつでもこいと心をオープンにしておくことが大事だと思う。
誰も話しかけて来なかった。
しかたないから授業中に近くの席になったヤツや同じグループになったヤツに自分から話しかけるようにしたがオレの見た目が不良のせいか気を使われているというか警戒されているような感じで友達と呼べるほどに仲良くなるのは難しかった。それでも話せるやつがいるというのは良いもんだ。
お昼は購買で買ったのを自分の席で食べていた、オレの席は窓側列の一番前の席だから景色を楽しみながら食べられるのはよかった、窓を全開にすると風が凄く入ってくる、目はあまり開けられないし髪の毛も大暴れしてボサボサになるけど爽快感があって気持ちがいい。
放課後はコンビニでバイトも始めたしスマホも買ってゲンタ達とたまにメールもしていたので友達がいなくてもまあまあ充実した高校生活を送っていた。
同じクラスにはもうひとりぼっちがいた、廊下側の列の一番後ろの席で陰キャのオーラを発している
少しぽっちゃりした体型で髪型はくせ毛で野暮ったく眉毛はつながりそうなくらいボサボサで口ひげを薄っすら生やしたニキビ面、いつも猫背で俯きがちで挙動不審で誰とも目を合わそうとしない、休み時間は席で本を読んでいるかノートに何かを書いているかで誰かと喋っているのをみた事がない、たまに授業中に先生にあてられるとボソボソと自信がなさそうに答えて、帰りのホームルームが終わったらそそくさとひとりで帰っていく、まるで男版の石川陽菜乃みたいなやつだ。
どこにでもそういうヤツはいるんだなと思った。
彼はいじめられたり
ある日の昼休み、トイレから教室にもどってきたときに島崎がいつものように机に向かって何かを書いている姿がみえたので、たまには話しかけてやるかと近づいてみた。
島崎はノートに鉛筆でとてもかわいらしいドレスを着た目がでっかい少女達のイラストを描いていた。
これは萌え絵というやつか? 小学校低学年の女の子たちが読んでいそうなマンガにでてきそうなキャラクター。
ロリコンかなと思ってちょっと引いた、こんな趣味じゃ彼女も一生できないだろうなと思った。まあ人の事言える立場じゃないけど。
島崎がオレに気づいて気まずそうにしていたので「何描いてるの?」と
そしたら島崎は「えっ……」と目を泳がせて動揺していたので「絵かくのうまいな」って言ってやったらすごく嬉しそうに顔を輝かせて「こ、これは、マジックプリンセスきらめきスイーツパイシリーズのピーチパイ担当のももちんこと
島崎が何を言っているのかわからなかった、とりあえず「そうか、かわいいな、続き描くのがんばれ」とだけ言ってその場から離れた。
◎
次の日。
体育の後の数学の授業はすごく眠くなる。
数学の教師の禿げたおじさんは見た目もしゃべり方もゆるキャラみたいにほわんとしててやさしくていい人なんだけど教えるのが下手糞過ぎて何を言っているのかよくわからない。
オレの隣の席のやつもその隣のやつもすでに睡魔に屈していた。
オレは眠気と戦いながら黒板の文字をノートに写していたがなんだか教室がやけに静かだなと思って後ろを振り向いてみたらひとりをのぞいて全員が机に伏せて寝ていた。
唯一起きていたのが
それから島崎はたまに目が合うとぎこちなくニコっとしてくるようになった。
朝、登校してきた時に校門なんかでばったり会うとボソッと小声で挨拶もしてくるようになってそのまま教室まで一緒に歩く事もあった。
懐かれてしまったかもしれない。
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