第39話 卒業
3週間後―――。
オレはスタンドミラーを背に半裸で立ち、死んだ魚のような目をして鏡に映る自身のケツにぶら下がったフサフサのしっぽを見ていた。
たった3週間……たった3週間で完全に再生しやがった……。
しかも前よりちょっと大きくなっている気がする……。
あれだけ痛みと恐怖に耐えて死ぬような思いをしてやっとで切断して、その後も傷口が痛くてまともに座れなくて、何度もパンツを血で染めて、痔だと母さんに嘘までついたっていうのに。
切断して2日目には傷口は完全にふさがり3日目には傷跡が少し盛り上がってきて6日目には産毛も生えて3週間後にはこのザマだ。
割に合わねえ。
終わった、完全に詰んだ……。
定期的に病院で切ってもらえばいいじゃんと思った?
それは絶対に嫌だ、何があっても絶対に誰にもみせないって決めたんだ、病院に行くくらいなら死んだほうがましだ。
◎
3月―――。
今までみんなに愛される最高の男になる事と女にモテる事だけしか考えていなかったオレは生きる意味を完全に見失っていた。
第一志望だった
別にどうでも良かった、どうせグローバルなモデルになる夢は諦めたし、世界中にたくさんの友達をつくるという夢もどうでもよくなった。
どうせオレには誠実な人付き合いなんて出来ない。
そんな事より早く働きたかった。
何でもいいから早く働いてお金をいっぱい稼いで貯金して、将来は人里離れた山奥に小ぢんまりとした小屋を建てて畑を耕して野菜を育てたりしながらたまに姿を現す野良猫やカラスに餌なんかあげたりして仲良くなってひっそりと静かに暮らすんだ。
それがオレの新しい人生設計だ。
それなのに母さんは「ぜったいに高校は行っておいた方がいいよ」としつこく言ってくるし、母さんの恋人の長谷川さんも「通学しながらでも働く事は出来るし、合わないようならすぐに辞めてもいいし、今しかできない経験もあるだろうから高校は行っておいた方がいいんじゃないかな」としつこいから第二志望校をまったく決めていなかったオレは近くに定員割れの工業高校があったのでとりあえず2次試験を受けに行ったらあっさり合格してしまった。
そこは男子校だったが、女と関わっても失望しかさせないオレみたいなクズ男にはちょうどいいと思った。
◎
中学卒業式―――。
校庭のサクラの木も淡いピンク色の花びらをはらはらと散らせて卒業をお祝いしてくれているようだ。
体育館でみんなで校歌を歌っている時に周りに泣いている女子達が居てつられて自分も涙が出そうになったけど野良猫が
式が終わって花道を歩いた、部活をやっていたやつらは後輩からいっぱい花束やお菓子の詰め合わせなんかをもらっていて、写真撮影なんかもやっていてスゲーなと思った。
◎
校門の近くでみんなと雑談をしたり卒業アルバムにメッセージの書き合いなんかをしている時に、
長すぎるスカートと伸びっぱなしのボサボサの髪が相変わらずダサい。
石川とは2学期の席替えで席が離れて以来あいさつすをする機会もあまりなかった。
勉強が出来るイメージは全くなかったけどちゃんと進学できたのかな。
校門周りもだんだん人が減ってきてそろそろオレ達も帰るかとなった時、まったく知らない後輩の女子達が恥ずかしそうにしながら近づいてきて「あの……先輩っ、ボタンもらっても良いですか?」って言われた。
オレなんかのボタンをもらってもなにも良い事ないぞって思ったけどどうせもう着ることもないし「いいよ」とあげることにした。
安達とのこのやり取りも今日で終わりか。
彼には本当に悪い事をしたと思っている。
高校生活は安心してのびのびと過ごせるといいな安達。
帰りはいつものようにシュウゾウ達と寄り道をして帰った。
ヨースケは近くの普通高校に進学して、シュウゾウとゲンタは県外に働きに行くらしい。
リョウとは最近はあまり会っていない、
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