第38話 決別

 下半身すっぽんぽんになってスタンドミラーの前に立った。

 寒さのせいでただでさえ小ぶりのチンコがさらに縮み上がっていた、最近やっとチン毛が薄っすらと生えてきた、シュウゾウ達はすでにボーボーだというのに、まあ今はそんな事はどうでもいい。

 ケツを鏡に向けると憎きしっぽがぶらりと垂れ下がっていた。

 認識するのも嫌で普段はほとんど意識しないで生活していたからこうやってまじまじと見たのは久しぶりだった。


 500mlのペットボトルと同じくらいの長さで全体が黒と灰色と白の混ざったふわふわの毛で覆われている。

 こいつとの付き合いも今日までだ、思い残しの無いように最後にちょっとだけ動かして遊んでみよう。

 しっぽをクルンと丸めてフリフリした、まるで犬だな。

 ピンっと垂直に立ててみた、なんか恥ずかしい……。

 クルクルクルクルとおもいきり振り回してプロペラのようにしてみた、これで飛べたらよかったのに。


 しっぽの芯は意外と細く直径12ミリくらいだ、触った感じでは骨はないはず、それでも自由に動かせるからたぶん筋肉で出来ているのかな。


 それじゃあ施術をはじめていこう。


 まずはしっぽの根本の毛をハサミで短く刈った。


 次に根元に氷をあてて冷やした。

 つめて~!


 ピアスの穴を自分であけた時に調べたんだけど、じゅうぶんに冷やしてからやると痛みが軽減されるらしい。


 5分くらい経っただろうか、しっぽがいい感じに冷えてきた。

 触ってもあまり感覚がない、今がチャンスだ。

 カッターの刃をしっぽの根元にあてた。


 恐怖で手が震えていたので深呼吸をして一旦心を落ちつかせた。

 こういうのは一気にいったほうが痛みも恐怖も一瞬で済む。


 よし、いくぞっ!!


 グサッ!


「ああああああ!イテてえええええええええー! やっぱ無理ぃぃー!」

 カッターをほうって小声で叫んだ。

 すぐにバスタオルでケツを押さえてなるべく床の音を鳴らさないようにぴょんぴょんと跳ねて痛みに耐えた。

 寝ている母さんを起こしたくない。

 

 何か硬い物にあたったしー! 

 なんなんだよ、骨あったのかよ。


 しばらくして痛みがちょっと引いてきたのでお尻に押さえつけていたバスタオルを恐る恐るめくってみた。


 ああああああ!血があああ!血がいっぱい出てるうう!


 とりあえず再びバスタオルで押さえてその上から氷もかぶせて冷やした。

 くぅぅ~~、しみるぅ~~。


 血がどんどん滲んでくる、バスタオル1枚じゃ足りないと思ったのでケツを押さえたままフルチンで脱衣所まで行き新しいタオルを2枚取り、台所からビニール袋と氷も追加で取ってきた。

 母さんはまだ部屋で寝ていたので助かった。


         ◎

 

 15分くらい経っただろうか、痛みもほぼおさまって血も止まっていたので再びカッターの刃をあててみた。

 最初の一撃で4ミリくらいは刃が入ったみたいだ、真ん中にちょっと硬い芯みたいなものがあるがそれにも1ミリくらい切り込みが入っていたので切れないって事はないだろう。


 一気に切断するという勇気はさっきので粉々に打ち砕かれたのでノコギリでギコギコするように刃をそーっと往復させながら少しずつ切っていく作戦でいくことにした。


 呼吸を整えながら、ゆっくり刃を滑らせた。


 くぅぅ~やっぱりいてぇ。


 血が出たらタオルで押さえて上から氷で冷やして少し経ったらまた刃を滑らせるというのを何度も何度も繰り返し、休憩もはさみながら時間をかけてちょっとずつ、ちょっとずつ、着実に切り込みを入れていった。


 替えに用意したタオルも血だらけになって体の震えは止まらないし気分も悪くて吐きそうで時には意識が飛びそうになったりもして、もしかしてオレこのまま死ぬんじゃないかという思いが頭をよぎったりもしたが、ここで諦めたらオレの人生は終わってしまうと何度も自分を奮い立たせて作業を続けた。


         ◎


 2時間くらい経っただろうか、最後の薄皮をぶちっと切り取りついにしっぽを完全に切断することが出来た。


 傷口をタオルで押さえながらもう片方の手で血だらけになったしっぽを鷲掴みにすると震える腕で天に掲げて小声で叫んでやった。


「やったぜええ!! これでオレの人生はバラ色だあああああ!!」

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