第22話 野外活動だっ!
一学期最後の日は3年生全員による野外活動があった。
朝は全員ジャージで登校して運動場に集合。
貸し切りのバスに乗る前に担任の杉浦がやってきて生徒は整列させられて出欠をとった。
「飯田!」
「はい」
「井口!」
「はい」
「石川! 石川ー? 石川は今日は休みか」
◎
バスの中ではみんなで童謡を歌ったりして過ごして30分くらいでなかよしキャンプ場に到着した。
午前中はグループ毎に分かれてウォークラリーをした。
オレたちのグループはシュウゾウとゲンタと
ちゃんと時間内にゴールすることが出来た。
11時半頃に弁当を食べて、休憩の後は芝生の広場でフットサル大会があった。いきなり3組の全員サッカー部のやつらとあたってボッコボコにされた。
無駄にたくさん転んで擦り傷作ってジャージも汚して無様な姿を
試合はいくつも同時にやっていたのでそんなに注目されていないのが救いだった。
夕方になるとカレー作りがあった。2つのグループで組んで一緒に協力して作らないといけない。
佐々木剣士が2組の
秋元たちギャル軍団が少し照れたようにニヤニヤしながら「よろしくー」とやって来た。
その中に鈴木凪もいた。
急に緊張してきた。
みんなが女子とお喋りをしたりケータイのアドレスを交換したり虫を捕まえて女子達に悪戯をしたりして楽しくのんびりだらだらとやっているなかオレはひとり黙々と作業を進めていた。
鈴木以外みんな一度は同じクラスになった事がある女子達だけどそんなに喋った事もないし、鈴木も含めキラキラした一軍の女子たちと一緒に居るとちょっと緊張するからひとりで何かしている方がましだ。
調理器具と材料を炊事場に運んだ後、泥がいっぱいついたジャガイモを水道で洗っていたら「
振り返ったら
「おう、ひさしぶり」と返したら秋元が「ウチらも洗うの手伝うよ」と言って二人はダンボールの箱から土だらけのニンジンを取り出してオレの隣に並んで洗いだした。
二人とも派手にデコられた長い爪をしていて洗いにくそうで、ニンジンの
「朝世くんこの子知ってる?」
真ん中に立っていた秋元が背中をそるように傾いて隣でニンジンを洗っている鈴木を見えやすいようにした。
鈴木の顔を見ると、彼女は片手で目元にピースサインをつくってオレにウインクしてきた。
オレはすぐに目線を洗っているジャガイモに移した。
「しっている」
「えっそうなの!?」
「うん、校内で何度か見かけた事ある」
「それ知ってるっていう? ウケるんだけど」
「転校してきたんだろ?」
「そうだよ、それは知ってるんだ。鈴木凪ちゃんだよ、仲良くしてあげてね」とオレをみて秋元はニヤニヤしていた。
「おう……」
「「
同じグループの他のギャル達が少し離れたところからニヤニヤしながら呼んでいた。
「あ、ごめん、ちょっと呼ばれてるから行ってくるね~」と秋元は洗いかけのニンジンをおいて行ってしまった。
再び鈴木と目が合った。
オレが「ヨロシク……」と言うと鈴木は「ヨロシクネ」とニコっと笑った。
「……」
「……」
気まずい。
野菜を洗う水の音だけが大きく聞こえていた。
何か話しかけないと。
「……オレの名前は
「鈴木さんは何でこっちに転校してきたの?」
「
「なぎ、さん……?」
「さんもつけなくていい」
「わかった……」
「朝世くんの事はなんて呼んだらいい?」というから「好きなように呼んでいいよ」と答えたら「本当に!? やった~、じゃあ何にしようかなぁ~……ん~……
「あさたつはやめたほうが良いかも……」
「え、何で? 好きなように呼んでいいって言ったのに?」
「いや、オレは別にそれでもいいけど鈴っ……
「えー可愛くない? 朝世の朝と立春の立で
「可愛くねえな」
「かわいいよ~! 凪は好きだよ朝立くん…」
「そっか、わかった‥…じゃあそれでいいよ……」
「わーい」
朝立なんて産まれて初めて言われたんだが。なんだよ朝立って。
「朝立くん!」
「くんは付けなくていい」
「え、いいの!?」
「鈴っ……凪もさんはつけなくていいって言ったから、これでおあいこだ」
「ありがとう! いきなり呼び捨てって、なんか仲良しみたいだね」
「そうだな…」
めっちゃグイグイ来る、どうしよう。
再び野菜洗いに集中していたら凪がぼそっと言葉をもらした。
「やっぱりやさしいじゃん……」
「何の事?」
「朝立」
「オレ!?」
「うん…‥」
「やっぱりってどういう事」
「んん、何でもない」
そんな言い方をされたら余計気になるんだが。
オレはきれいになったジャガイモをボウルに入れてダンボール箱に残っていた最後のニンジンを取って洗った。
「今日は一緒に踊れるといいね、フォークダンス」
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