第21話 コブラとマングース

 石川はオレの両手の中指に自信の指先をちょびっと触れたままで踊り始めた。


遠慮しているのかなと思ってオレのほうから握ってみたが石川の手はするりと引っ込められてしまった。


 踊りながらだったのでたまたま離れてしまっただけかと思ってもういちど握ろうとしたらやっぱりするりと引っ込められた。


 え?


 どういうことだ!? 


 石川はオレの指先に触れたり触れなかったりするという絶妙な距離間を保とうとしているみたいだった。

 オレが石川の目をガン見しても石川は伏し目がちで下の方ばかりをみて顔も見ようともしない。


 え、もしかしてオレ嫌われてる!? 


 そんな事あるわけはないよな、だってオレは他の男子よりも石川に優しく接して来たしな。


 三度目の正直だ、今度はちょっとすばやく、力も強めに強引に石川の手を掴んでやった、そしたら石川も力づくで手を引っ込めた。


 完全に拒否られている。

 

 そうかお前はそういうやつなのか石川。

 そっちがそうくるならオレも遠慮はしない。

 絶対に握ってやる。


 オレは石川の手を何度も何度も掴もうとしてどんどん近づいた、石川はシュッシュと手を引っ込めながら後ずさりして一定の距離を保とうとした。


 そのうち石川は慣れてきたのかオレが指を捕まえる前にシュッと引っこめられるようになっていた。

 まるでコブラが狙って噛みつこうとするのをマングースがギリギリのところで身を引いて避けるような感じだ。


 だんだんムキになってしまっていた。


 そんな時だ、

「おいあれ見ろ、朝世あさせが石川をびびらせてるぞ」

「マジだ、何やってるんだあいつウケる」

「安達の次は石川まで襲ってんのか、アホだろ」

 数名の笑い声が聞こえてきて、ふと冷静になって周りを見たらオレと石川は列の輪からはみ出して目立ってしまっていた。

 

 そこでちょうどペアチェンジのタイミングがきて、少しあたふたしながらもオレと石川は列の輪にもどり、オレは次の相手の飯田汐里いいだしおりと踊ることが出来た。


 飯田はいじめとかが嫌いな真面目タイプだから絶対怒っているだろうなと思って顔を見れなかった。


 鈴木はどうしているだろうとチラッとだけ見たら少し険しい顔をしているように見えた。

 きっと鈴木もオレが石川をいじめていると思っただろうな。

 

 飯田と一通り踊り終わって次はいよいよ鈴木凪とペアだ、

 と思った所でちょうど音楽が終了した。


「よーし、もうみんな踊りはだいたい覚えたな? じゃあダンスの練習はここまでにして残り時間はクラス対抗バスケットボールだ」と体育教師の角田が言った。


 正直ちょっとホッとした。

 今は鈴木と踊りたい気分じゃなかった。


 バスケットボールは運動部のやつらに任せてシュウゾウ達と一緒に見学していたた。

 オレはスポーツが下手クソだ。

 女子達の前でかっこ悪い所を晒すわけにはいかないからな。

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