第10章 誰だって最高の人生を送りたい

 学校に着いたが完全に遅刻だ。

 憂鬱な気持ちで教室の扉を開いたらオレの姿を見た教師が驚いて絶対に保健室に行けというのでしかたなく保健室に向かった。

 朱美あけみ先生にまた君かと呆れられながら消毒をしてもらって頭に包帯を巻いてもらって顔や身体の色々な所に傷テープやらガーゼやらをペタペタと貼ってもらってベッドで少し休ませてもらうつもりが爆睡してしまって結局午前中は寝過ごしてしまった。


 お昼に購買へ弁当を買いに行ったらシュウゾウとヨースケとゲンタと2組のリョウがちょうど居て、いつもよくたむろしている校庭の芝生の木陰のところで一緒に食べることになった。

 

 みんなが買う弁当はいつもだいたい肉と揚げ物ばっかりのヤツとか肉とチーズだけしか挟まっていないハンバーガーとか炭水化物と油と砂糖だけでできた菓子パンとかで、飲み物はコーラかメロンソーダ、レモンティー、カフェオレ、果汁数パーセントの清涼飲料水などだ。

 正直オレはそういうのを見るたび内心勝ったと思っている。

 意識低すぎだろ。


 気持ちはわかるよ、美味いもんな。

 店の品揃えを見てもそういう商品のほうが多く陳列ちんれつされているから一般的にも人気なんだろう。


 だけど甘いんだよ。

 考えがガキなんだよ。


 オレのチョイスを見ろ!

 野菜、肉、魚に雑穀米。

 いろどり、栄養ともにバランスの優れたヘルシー弁当。

 飲み物は野菜100パーセントのジュースだ。

 意識高えだろ。

 オレは先のことまでちゃんと考えて食べているんだよ。

 美容や健康は日頃からの積み重ねが大事だって知っているからな!

 一般人とエリートではこういう所で差が出るんだよ!



 人間として生まれてきたなら誰だって最高の人生を送りたいと思うはずだ。

 男なら世界一かっこいい男になって、世界一かっこいい彼氏になって世界一かっこいい夫になって世界一かっこいい父親になって世界一かっこいいジジイになりたいと思っているはずだ。オレもそうだ。


 オレはスタイルも良いし顔面も国宝級の超絶イケメンだから将来は世界中を飛び回って大活躍するスーパーモデルになると決めている。

 今はまだ身長175センチだけどこれからどんどん伸びまくって204センチになる予定だ。

 ハイブランドの看板やテレビCMにも出まくって超絶金持ちになってじいちゃんばあちゃんと母さんに豪邸をプレゼントする。

 世界中のたくさんの老若男女にモテモテになってちやほやされて、どの国に行ってもパーティー三昧で世界中にたくさんの友達を作って、たくさんの女性と付き合って、この人だっていう最高の運命の相手に出会ってイルミネーションが施された絶景のロマンチックな場所でひざをついてプロポーズをして結婚して自然が豊かで見晴らしのよい丘の上に二階建てで暖炉もついている木造の広々とした一軒家を建てるんだ。


 子供は4人で大型犬3匹。毎日笑顔の絶えない明るく幸せな家庭を築き、子供たちが皆自立したあとは彼女と2人だけで旅行を楽しんだりキャンプをしたり孫の面倒をみたり映画を観たり家庭菜園をしたり料理をしたりテニスや散歩などをしたりしてのんびり気楽に過ごす。

 最後はベッドで手を握ったまま最愛の人を笑顔で見送って、その数日後に自分も寿命でいく。

 それがオレの人生設計だ。

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