第5話 人生は競争だ

 新しい教室に入って自分の席に着きクラスメイトたちを見回した。

 ここ草林くさはやし中学校はこの近くにある草林小学校からあがってきた生徒ばかりなのでほぼ全員が顔見知りみたいなものだ。

 オレは小5の時にこの街に転校してきたんだけどそれでももう4年間は一緒にいるから学年全員の顔と名前はほぼ知っている。


 クラス替えをしたらまず最初にする事は何か知っているか?

 自分のランクの確認だ!

 人生は何事も競争だ、雑誌とか読んでいると誰が美人かなんてランキングもあるしテレビでも頭の良さやスポーツや歌の上手さで競っているし、学校でも運動会で赤と白に分かれてどっちが強いか競う、クラス別でも競う、個人でも競う、お菓子だってきのことたけのこで競っている。この世は常に勝負なんだ。男たるものクラスの中で一番かっこいい男でいたいし、女子達の一番モテたいし、自分がどのくらいの位置にいるのかを把握しておくことは大切だ。


 まずはオレが苦手なタイプ、スポーツもできて度胸もあって明るい人気者グループを見てみよう。


 皆の輪の中でガハハハと大口を空けて笑っているハスキー声の男は佐々木剣士ささきけんし。バスケ部のキャプテンでリーダー的存在、持ち前の明るさでよくみんなを笑わせてるし身長も高くて見た目もまあまあかっこいいしまあまあモテてはいる。だけどオレだって負けてねえし、性格はオレのほうが優しいしオレのほうがイケメンだしお洒落だしガタイもいいし身長だってこれから抜く予定だし。


 佐々木の隣でケータイゲームをしている色黒男は酒井和也さかいかずやだ。

 サッカー部で明るくて面白くて人気者グループの1人だけど性格悪いしバカだし汗臭いし天然パーマだし剛毛だしゲームが趣味とか子供っぽいしオレの勝ち。


 その他運動部のやつら。

 ニキビニキビダサいダサいダサいオレの方が身長高いしオレのほうが性格いいしオレの方が強いし肌も綺麗だし歯並びも良いしお洒落だしイケメンだしオレの勝ち。


 次は不良グループを見てみよう。

 オレが最近よくつるんでいる仲間たちだ。

 机をはさんで二人で一緒にマンガを読んでいるやつら、茶髪の短髪がゲンタで黒髪の長髪がヨースケ、その隣の席でケータイを観ながら前髪をいじっている銀髪頭がシュウゾウだ。

 ゲンタは少しぽっちゃりだしバカだしマンガ読んでるからオレの勝ち、ヨースケはスラッとして背も高くてかっこいいしまあまあモテるけどちょっと不潔だしだらしない所もあるし性格もちょっと悪いしチャラいし健康に気を使ってないからオレの勝ち、シュウゾウはイケメンだしお洒落だし彼女は一つ上の高校生の先輩だし喧嘩も強いし結構モテる、でも若干ナルシスト入ってるしチャラいし健康に気つかってないしオレのほうが身長も高いしイケメンだしお洒落だし勝負した事ないけどオレのほうが絶対力強いしかっこいいしオレの勝ち。


 最後はおとなしくて目立たない男子グループ。

 卓球部囲碁将棋部吹奏楽部ゲーマーオタクオタクオタクガリ勉ヘンタイ幼稚デブ根暗天然パーマニキビヒョロガリオカマダサいダサいダサいダサい。

 勝負にもならねえ。


 結果オレが一番かっこいい。

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