第29話 二人めのレジェンド



 スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。レジェンド。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパー……。


「ちょっと待て! 今、レジェンドいたよな?」


 おれはあわてて視線をもどした。


 スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。スーパーレア。レジェンド——いた!


 お、おおーっ!

 出た。銀髪美少女!

 ファンタジーではこれも定番。九尾は白髪だけど、この子は銀髪。ブロンドみたいなツヤがあって、たぶん、ほんのりとだけどグレーがかってるんだろうな。まるで銀箔。


 けど……うーん。ストレートロングか。巻毛じゃないんだな。

 銀色の髪にピンクとブルーのまざったような瞳で、すっごく綺麗なんだが、トキメキが足りない。やっぱ巻毛か……これ、巻毛だったら、めっちゃ萌えてた。


 とは言え、レジェンドだ!


「君は今すぐ、おれに力を貸してくれ。ホールダーになってくれ」

「あの子はいいと言った」

「あの子?」

「あの子は鏡のなかのわたし」

「ああ、そういう……」


 不思議ちゃんか。

 まあ、それもよし!

 おれ、どんどん器デカくなってる感アリアリ!


「じゃ、君の名前は、シルヴィアン。あと、君と君と君と君はおれのホールダーだ。葵、桜、あざみ、菊……あ、いや、菊音きくねだ」


 あぶねぇ。前に九尾を怒らせた名前にするとこだった。

 だんだん、女の子の名前のレパートリーがなくなってく。


 おおっ、急きょ増やしたホールダー。体のなかから力が湧きあがってくる。

 おれ、なにげにスーパーレアやレジェンドのホールダー多い。第一夫人からの基礎値はないに等しいとしてもだ。補正値の高さでおぎなってる。


「それにしても、この子たちの鎖、どうやってとくんだ?」


 鎖は全員が一本の長いのでつながれてる。その上、一人ずつ鎖に固定した手枷てかせがかけられてる。これは、いったんあきらめて、ゴモラを倒してから戻ってくるべきか?


 と——


「とおっ!」

「な、何やってんだよ。小山内」


 いかなり抜刀して抜き身ふりまわすんで、嫉妬のあまり、女の子たちを皆殺しにでもするのかと思った。

 でも、次の瞬間、ガチャーンと大きな音がして、シルヴィアンの両手を束縛していた手枷が真っ二つに切断されていた。


「えっ? ええー? これ、鉄製……」

「はい。行くよぉ」


 小山内、次々に日本刀をふりおろし、手枷を両断していく。スゲェ。なんて切れ味だ。まるっきり、じゃねぇか。


「はい。終わりぃ。君たちは我々がゴモラを倒すまで、この街のなかで隠れてて。売られちゃったら助けに行けないから、市場につれていかれないよう気をつけてね。山田くんのホールダーだけついてきて」


 女の子たち、ゾロゾロ馬車をおりていったけど、この外にはゴモラのホールダーが待ちかまえてるはずだ。

 おれはあわてて、女の子たちを押しのけて外へとびだした。


 あれ? いつのまにか、兵士っぽいのいなくなってる。どおりで長いこと話しこんでも、ぜんぜん、見つかる気配なかったわけだ。


 そこは駐車場のようだ。

 床は土間。壁もトタンみたいだ。とにかく、すごくボロい。でも、大きな馬車が十台もあった。おれたちがありあわせで造ったそりとは、えらい違いだ。馬車だけは立派だな。


 さっき、外から帰ってきた馬車は三台。女の子がそれぞれに三十人ずつくらい乗せられてたはずだ。

 そのうち一台は、おれたちが解放した。残り二台。でも今、女の子がつながれてるのは一台だけ。一台ぶんはカラッポになってる。


「あっ、ヤッベェ。さっき、競売の準備にかかれって言ってなかったか? もう運ばれたんだ!」


 それにしても、世界に男は二十人しかいないってのに、誰が奴隷を買うんだ?


「水城! 魔魅! いるか?」

「二子! 三子!」


 返事はない。

 市場につれていかれてしまったみたいだ。

 クソッ。おれのホールダーは一人も渡さないぞ!


「小山内。ここにいるみんなの鎖を切ってやってくれ。おれは水城たちを助けに行く!」

「わかった。すぐ追いかける!」


 小山内は一人でも大丈夫だ。ステータスは低いけど、何しろ、〇鉄剣を持ってる。

 あれ、ララが作ったんだよな? 武器製造。スゲェ。


「よし。行くぞ。売られてしまう前に、みんなを助けるんだ!」


 おれたちは走った。

 奴隷市場、どこだ?

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