第26話 新規ホールダー参入



 おれは即答だ。


「行く。水城と魔魅をとりかえす!」

「やったね。じゃ、敵を倒すまで相互不可侵条約ね」

「おう。あと、友好和平条約も」

「うんうん」


 まあ、小山内じたいはホールダーが持てないっていうから、ぜんぜん警戒する必要もないくらい弱々なんだけどさ。


「それにしても、小山内はよく今まで、そのステで生きてこれたなぁ」

「女の子たちが自分でスキル使えるタイプいるよね? ああいう子たちと力あわせて、なんとか」

「ふうん」

「その子たち、みんな……」


 隠れ里は破壊されたって話だ。みんな、死んじまったんだろうな。かわいそうに。

 そう思ってたのに、

「えっ? みんなと会いたい?」

「えっ? 生きてんの?」

「おまえ、勝手に殺すなよ!」

「いや、だって……」


 あの口調なら死んでると思うよ、ふつう。


「ま、いいよ。里が焼かれちゃって、隠れる場所ないしね。あんなとこにみんなを置いてくのは心配だから」

「えっ? みんな、つれてく気か?」

「そのかわり、守ってあげてよ?」

「なんで、おれが?」

「だって、君のホールダーだよね?」

「えっ?」

「えっ?」


 やっぱりハチャメチャな子だなぁ。おれ、ただの一度も会いたいとすら言ってないのに、いつのまに、おれのホールダーってことに? まあいいんだけど。今、十枠あきがあるから、一人でも女の子多いほうが強くなれる。


「じゃ、呼ぶよ? おーい。みんな、お肉わけてくれるって!」

「えっ? ええーっ?」


「わあ、肉だ肉だ!」

「食べ物〜」

「お腹すいたよぉ」

「ごちになりまーす」

「牡丹肉だ!」

「熊肉もあるよ」

「スゴイねぇ。豪勢。気前いい〜」


 周囲の木のかげから、わらわらと女の子が湧いてでる。

 なんなんだ? この子たち。なんで、おれがめんどう見るハメに?


 深夜の焼肉パーティーは続く。


 翌朝。仮眠とって、目がさめたあと、あらためて新規参入の女の子たちが、おれの前に整列した。全部で七人だ。

 おお、カラフルだなぁ。

 グリーンヘアーの子。ブルーロングの子。真っ赤の子。オレンジ。アッシュブロンドのベリーショート。黒髪だけど、巻き巻きの子もいる。ああ、ロロを思いだすなぁ。あと、褐色の肌の子もいた。めずらしいな。それはそれでエキゾチックでよし!

 あれ? おれ、乗り気だな?

 当然、顔は全員、同じなんだけど。


「よし。じゃ、不便だから、みんなに名前つける。君はみどり》。君は青、青だから……瑠璃るりかな。君はいちご蜜柑みかんちゃんね。アッシュブロンド難しいな。灰色、グレー……グレースね。巻毛ちゃんはララかな。ロロに似てるから。長い名前はライザ・ライラック」


 黒髪の巻毛に青い瞳。

 来る……けっこう来る。

 おれ、もしかして、金髪も好きだけど、巻毛ってのがポイント高いのかも?

 か、可愛い! またもや知った、おれの性癖!


「エキゾチックな子は、うーん。南国チックなサマー……サマンサで」


 ほとんどの子はアンコモンだけど、グレースとサマンサがレア。ララがスーパーレアだ。


「グレースの聖なる光ってスキルは?」

「光魔法です。マスター。大技は敵一対に特大の攻撃魔法を放つライティングシュート。小技は敵全体に小ダメージとめくらましをあたえるライティングシャワーです」


 攻撃魔法。ありがたい。これで遠距離攻撃できる。


「あっ、あたしたちも攻撃魔法だよ。あたしは火属性。大技フレイムピラー、小技フレイム。瑠璃は水属性」と言ったのは、苺だ。赤毛のボブカット。可愛いな。


「グレースほどの威力はないけど、飲料水確保や火起こしにも使えるの。わたしの大技はレインストーム、小技はスプリングウォーター」って、これは瑠璃。


 日常生活に使える。便利。


「助かるなぁ。こっちで攻撃魔法使える子いなかったからさ」

「山田くん。攻撃もいいけど、翠の魔法が生活にはかかせないんだよ」と、口をはさんできたのは、小山内だ。

「翠、見せてあげなよ」

「うん。いいよ」


 翠は袋から何かの種を出すと、地面に植えた。そして呪文を唱える。


「大地の恵み〜」


 すると、なんと、見てる前でニョキニョキと芽が出て、どんどん成長してく。再生スピードを百倍にした感じ。ほんの二、三分で、たわわに柿の実った立派な木になった。


「わーい。フルーツだぁ」

「食べよ。食べよ」

「ほら、山田くんも!」


 そういや、ずっと肉か野菜ばっかで甘いもの食ってない。遠慮なく柿の実をもいで食う。美味い! 甘味ー! おれ、甘味に飢えてた。


「美味い! スゴイ技じゃん!」

「いいでしょ? 翠のこの技のおかげで、あたしたち食いつないで来たんだよ」


 大地の恵みは大技だ。一日に一回しか使えない。植物の生育速度を急速にあげることができる。

 小技はグリーンネットっていう、戦闘中にも使える緊縛系のやつ。


 使えるな。この子。アンコモンだから数値は低いけど、絶対に手放せない。戦闘で高い能力を発揮する子と、生活に役立つ子では、また違うんだ。生活面で言えば、九尾やグレースの技はあんま役に立たないもんな。


「えっと、じゃあ、サマンサのスキルは? えーと、古代の舞か」

「わたし、日本語、わからない。スモール。スモール」

「えっ……」


 サマンサはおれが聞いたこともない言語で何やら話した。カタコトの日本語と英語をまじえてるけど、これ何語だ?


 小山内が説明する。


「大丈夫。こっちの言ってる意味はわかってるから。サマンサはバリ語なんだよね」

「バリ語……」

「大技は戦神の舞。戦闘中、マスターのすべての攻撃が、ヒットするたびに、あたえるダメージを倍々で増やしてく。効果はその戦闘が終わるまで。ただ、一回でも攻撃外すと、倍増効果はいったん切れるからね」


 うおっ。スゴイ技だ。有沢との戦いのとき、めっちゃ役立つ。


「小技は幻惑の舞。敵一対を混乱させる。あたしたちはこの技でモンスターを混乱させて、翠のグリーンネットで捕獲してたんだ。最後はあたしの刀でトドメ。戦闘中の攻撃魔法は、マスターがいない子たちは自分で使えないんだよね」


 うん。苦労してきたんだな。


「ララちゃんのスキルは何かな?」


 ララは微笑んだ。可愛い。可愛いぞ。


「うち、武器製造なんよ」


 京言葉! 西洋風の容姿に、はんなりギャップ! これはズルイ。乳も大きめ。


「えっ? 武器?」

あかねの刀も、うちが作ってあげたんよ」

「茜?」


 小山内があわあわした。

「しいっ、しっ。ダメ。ダメ」


 ああ、小山内の下の名前か。フルネーム、小山内茜なんだ。


 にしても、武器製造か。あの日本刀なんか、名工の刀鍛冶が打った大業物みたいに見えたぞ。可愛い顔して、怖いスキル持ってるな。さすが、スーパーレアだ。

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