二章 分裂! 増殖!

第7話 甘い日々♥︎



 それからのおれは、ただひたすら美少女とイチャイチャする毎日だった。

 なにしろ学校もないしさ。飯は黙ってても出されるし、暑いシャワーや寝床もあるし、なんの心配もいらない。

 ちょっと不満があるとしたら、やっぱり予想どおり退屈なことと、料理が肉とつけあわせの野菜ばっかで単調なこと? たまにはラーメンとか、ハンバーガーとか、アイス食いてぇ。


「ニャー! するにゃ! ホールダーとご主人さまは、すればするほど、感度がよくなるんにゃよ?」


 今日も朝からキャットがとびついてくる。


 ちなみに、毎晩、ベッドには一人ずつ別の子がしてる。

 こっちに来て、今日で五日め。だから、最初に沙織、その夜に九尾、二日め桃花、三日め紅葉、四日め魔魅だ。

 今日は誰にしよっかな。

 猫耳に特別の思い入れがないんで、キャットとはまだだ。


「えっ? ほんとに? すればするほど?」


 おれは自分の胸のまんなかを押して、ステータスを確認した。たしかに、レベルは1のままなのに、補正数値があがってる。


 ふふふと笑ったのは、桃花だ。桃花も可愛かったなぁ。うっとりするような桃尻。深窓の令嬢だっこしてるみたいで。ドレスからのぞくアンティークな下着が、なんとも……。


「ホールダーとは親しくなるほど、シンクロ率が増しますのよ。シンクロ率は補正値に加算されるパーセンテージと直結していますわ」


 なるほど。乙女ゲーでよくある親密度とか、好感度みたいなもんか。

 ネームのよこの%って、シンクロ率ってやつだったんだな。最初はみんな10%から始まる。んで、夜をともにした子たちは5%ずつあがってる。

 すげぇ。九尾の四桁のステなんか、5%あがっただけで百以上も補正される。


 九尾は……妖艶だった。

 赤い振袖の下に紫の長じゅばん。帯をほどくと、乱れる着物のあいだから、白い裸体が……。


「玲音や。わらわに任せてたもれ」

「えっ? う、うん?」


 ほっそりした指さきが伸びてきて、おれを包む。

 たくみにうごめく指。舌。赤い唇がムグムグ……。

 天国だった。


「そっか。するほどか! じゃ、するか!」

「するにゃーん」


 ほんとはキャットより、百合か水城とやりたかったんだけど、こうなったらノリだ。

 おれはキャットをつれて、ベッドルームに入った。ここは、みんながいるリビングルームとは別。

 テーブルと椅子のあるのが居間で、その奥に目立たないハッチが二つある。片方が寝室、片方がシャワールームだ。トイレはシャワールームのさらに奥。


 おれがキャットをつれて寝室に入るとき、沙織はちょっと悲しそうに見送った。でも、なんも言わない。

 そんな恨みがましい目で見てもさ。だって、だましてたのは、そっちだろ?

 ステータスやシンクロ率の仕組みわかってたら、第一夫人は絶対、九尾にしてた。

 まあ、だからって憎いわけじゃないんで、ホールダーの一人だったら問題なかったんだけどな。八乙女さんの面影のために。


 沙織は服着たら、うちの学校の制服に似たブレザー姿なんで、より八乙女さんっぽい。

 トラックにひかれて死んじゃった八乙女さん……でも、なんか、こんなにたくさん彼女の顔があると、だんだん思い出が遠くなる。日々のエロスのなかに埋没していく。


 おれって、どんな気持ちで八乙女さんのこと好きだったんだっけ? 目があえばドキドキしたり、すれちがうとき彼女が少し微笑んでいったような気がしただけで、舞いあがるような心地になった……り?


「にゃーん! 早く、早くするにゃん!」


 それが今じゃ、これだ。

 みんながみんな、おれの機嫌とって尻尾フリフリ。

 うーむ。女豹か! キャットは女豹スタイルか!


「てか、おまえ、尻尾あるじゃん!」

「ケモ耳と尻尾はセットにゃん! ほれ、するにゃん」


 尻尾から続く、この丸みをおびたライン。女の子の体のなかで、一、二位を競うエロな曲線。フリフリされて、おれは獣になった。


 こうやって、おれのなかの八乙女さんの思い出が消えていく。壊されていく……。

 今のおれにとって、彼女は自分の思うがままになんでも要求できる美少女ビッチ!

 まさに〇奴隷!(〇には好きな単語を埋めよ)


 まあ、そんなこんなでバカな遊びは続く。あんまりヒマなんで、目隠し鬼をした。

 おれ一人が布で目を隠して、美少女たちを追いまわし、乳の形で誰かを当てるっていうゲームだ。


「おおっ、デカイ! このボリュームは紅葉だろ?」

「チッ。当たってるぜ。お返しにもんでやるぜ!」

「や、やめろって。今は。ほかの子がつかまえられないだろ」

「じゃ、あとでな」


 へへ。いいなぁ。ハーレム。『このなかで一番好きなのは誰?』とかなんとか、めんどくさいこと言いだす子がいなくて、ほんと助かった。

 だって、みんな顔は八乙女さんなんだよな。みんないっしょで、みんな可愛い。


「さてと、次は誰かなぁ? つかまえちゃうぞぉ」って、おれ、けっこうなエロおやじ。


「そりゃ!」

「あっ……」


 ん? つかむとこ間違えたか? あのやーらかいポヨンポヨンがない。皆無。つるっとペタンとスッキリと。

 ああ、リタか? ロリータのリタ。でもそれにしちゃ、身長はあるんだよな。リタの胸ならおれのヘソ位置のはず。


 変だなと思い、服のなかに手を。モミモミ……もめない。

 やっぱ、ない?


「誰だ? おまえ?」


 おれは目隠しを外した。

 おれに胸をつかまれて、真っ赤な顔をしてるのは、水城だ。ボーイッシュ水城。セーラー水城。


 まさかと思い、おれはそのまま、片手を下におろしてみた。

 や、やっぱりだ!


「……こいつ、男だ!」

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