言葉の葉脈

御手洗快

「美味」

 私はフランス料理が好きだ。一皿また一皿と彩り鮮やかに盛り付けられ出てくる様は、心を満たしてくれる。だから、行きつけの店は持たずに興味の赴くまま店に入る。

 「Le premier《ル・プルミエ》」には一目でひきつけられた。トリコロールの鮮やかな青を想わせる柱に、品格のある赤でまとめられた店内が覗えるガラス張りの外装。街角という立地を十全に理解しているこの店は、夜も更け駅に向かう行進が始まっても賑わっている。

 ウェイトレスに通されたのは調理が見えるカウンターの席だった。運ばれてきた前菜が卓に着く前から私は目を奪われた。

 

 気付けば、シェフが滔々とスープの説明をしていた。あと一掬いを残す皿を前に席を立つ。ウェイトレスが何かあったかと問いかけてくるが、それを無視して外に出た。


「美味しかった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

言葉の葉脈 御手洗快 @nylon101

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ