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HMVをしばらくぶりに覗いたら、ミーターズの初期のアルバムが3枚並んでいた。初期のミーターズはベスト盤しかもっていなかったので即購入。いい気分になって店の外に出ると、出口でタバコを吸っているルナに遭遇した。「何買ってきたの」と言って僕がぶら下げていたビニール袋を取り上げると、中を覗き込んだ。そして「何これ」と中に入っていたCDを取り出して眺めている。「黒人のファンクだよ」と僕が答えると「黒人って歌うまいんだよね」とルナが答える。どこまで信じていいのかわからないけれど、ルナは結婚式場でバイトしていたことがあるらしく、その式場では黒人が賛美歌を歌うサービスがあったらしい。その時きいた黒人の歌にいたく感動したようだ。「ねえ、これ借りていい」ルナは3枚のCDから1枚選んで自分のカバンにしまい込んでしまう。貸すのはかまわないんだけど、ちゃんと聴いてくれるのだろうか。すっかり忘れられてしまいそうな気がする。
家に帰って残りの2枚のCDを聴いてみた。なかなかご機嫌な演奏だったけど、もしルナがちゃんと聴いてくれたとして、気に入ってくれただろうか。この時期のミーターズはインスト中心で、多分ルナが聞いたであろうゴスペルっぽい雰囲気はほとんどない。「何これ」って言ったまま終わってしまったかもしれない。僕は、サム・クックのゴスペル時代のレコードを引っ張り出して聴いてみた。これをCDに焼いてあげればいいのかな。ちょっと面倒くさいな。果たして苦労して作ったCDを渡すときに、ルナはちゃんと覚えているだろうか。
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