団結の三羽烏
「いいいいいきなりなんですか!?」
マルコヴナはそう言うしか無かった。
突然のこと過ぎて、状況把握することができなかったのだ。
しかし、アサミも落ち着いたようで、少しばかり深呼吸をしてから改めて説明をした。
「最近、戦ってて思ったんです。ヒート・アサシン・ナイフだけじゃ勝てないって」
「━━?でも、ヒート・アサシン・ナイフってナイフにもソードにもなる、結構優れた武器ですよね?何か問題が?」
「いやぁ、それは分かってるんですけど……如何せん、
なるほど、そういうことか。
要するに、ソードモードにしても、まだリーチが足りないと、そういう話だろう。
しかし、あれは内蔵されたギミックであるため、これ以上更に刀身を伸ばすなどのギミックを搭載すれば、今度はナイフモードの時の重量が圧倒的に重くなってしまう。
なにせスノウラビットの強みはその機動力にあるのだから。
「うーん、い、一度、持ち帰ってみてもいいですか、この件━━」
「いいですよ!」
返事はすぐに来た。
酒の酔いはもう一ミリも残っていなかった。
マルコヴナは走って<ノア>の工業地区まで走った。
商業地区と工業地区が隣り合わせで、これほど嬉しかったことはない。
自分のいつも作業している『テムル社敷地内第二工場開発科』に向かって走った。
中に入ると、暗めの部屋に二人の男がいる。
勿論、息を荒げながら勢いよく扉を開けたので、中に入っている男二人も、こちらに気づいた。
「おい、どこ行ってたんだよ!」
今こうして言葉を発したのが、作業服姿なのに汚れは目立っておらず、黒くしなやかな髪を下げていて、おまけに毎日ホテルに行ってるようなパリピ野郎、ギャーブゥ・ジーサだ。
「そうですよ、急に酒を片手にココを出ていってしまわれたんですから」
この言葉を発したのは、ギャーブゥとは逆に、作業服が汚れていて(なのにいい匂いはする)、帽子を被った眼鏡の男、あだ名は「眼鏡の男」、ナルヤ・ウィーローブだ。
「そうだよ、俺らの『<イカロス>と
こんな作戦にマルコヴナも参加していたことを思い出した。
元々この三人でやろうと言い出した作戦だったため、マルコヴナも最初はやる気があったのだ。
でも、段々とほか二人のやる気が無くなってきて、それに少しばかり絶望してマルコヴナはこの場を抜け出して、一人でやけ酒していたのだ。
ただ、もうそんな事どうでもいい。
「そんな作戦、もうどうでもいいんだよ」
「それはどういうことですか!?アサミ・イナバはともかく、成功すれば大金獲得は
ナルヤはメガネをクイと中指で持ち上げながらまるでマルコヴナを見下すように言ってきた。
「半分━━?バカバカしい。俺は確実な方法を見つけた━━いや、
「「
二人の声が重なった。
「俺、さっきアサミ・イナバに会ったんだよ。そん時に、言われたんだ。スノウラビットのヒート・アサシン・ナイフを改良するよう頼まれた。それがどういう意味か分かるか……?」
マルコヴナの言いたいことに気づいたのは、ずっとゲスいことしか考えていない、ナルヤが先だった。
「━━!つまり、その提案を呑んで武器の改良を成功させれば、大金はほぼ確実、おまけにアサミ・イナバとの交流もとんでもなく現実的……!」
「あぁ、そういうことだ。大学サークルのちっさい目標から、大人の明確な目標に変えたんだ。このチャンスを逃したらこの先、大金は愚か、出世のチャンスだってあるかわからないんだぞ!?やるしか無いだろ!」
その光景を黙って見聞きしていたギャーブゥは思う。
(いつも大人しいマルコが……こんなにやる気出してる……)
そして、ギャーブゥとナルヤの目の前にマルコヴナの、固く、ガッチリとした手が突き出された。
「もう一度聞く。この案、俺は乗っても乗らなくても構わない。でも、お前らがまだ
その言葉を聞いたギャーブゥは、決心を固めた。
その証拠に、マルコヴナの手の上に、もう一つ、ギャーブゥの男らしい手が乗っている。
「当たり前だろ?」
ギャーブゥは微笑しながら言う。
それにマルコヴナも微笑で返す。
二人の視線がナルヤに集まった。
「━━ッ!やればいいんでしょう!やれば!」
ナルヤの細々とした手もギャーブゥの手の上に乗っかった。
「異議なし、だな」
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