ニーナちゃん考案っ!!スペシャルお酒大作戦!!

門はまだ体の半分ほどしか開いていないにもかかわらず、前列にいる人達はその間からくぐり抜けようとしている。

しかし、それは無意味に等しい。


門が開き切る前に出ようとしても、見えない壁のように半透明のバリアがあるだけだ。

そう設定されているのだから仕方ない。


詰まるところ、門の間をくぐり抜けようとしている彼らは、壁に頭から突っ込んでいるに等しい。

実際、数人は既に息苦しそうだ。

だが、抜け出そうとしてももう遅い。後ろには大量の人が待ち受けているのだから。




門が全て開きそうだ。

その瞬間から、テイムとマヒルの、『ニーナちゃん考案っ!!スペシャルお酒大作戦!!』は既に始まっていた。


実は、ニーナとアサミは一緒に行動してるものの、ニーナのは実はニーナ自身は持っていない。


持っているのは、マヒルだ。

この『ニーナ考案っ!!スペシャル大作戦!!』に、ニーナは基本的に参加しない。

主な作戦メンバーはテイムとマヒルの男二人だ。

なんせこの『ニーナちゃん考案っ!!スペシャルお酒大作戦!!』には、男でなきゃいけない理由があるのだから。




門が開きそうになり、透明なバリアが無くなる寸前、マヒルが隣に控えているテイムに叫んだ。


「行くぞッ!テイム!!」


「了解ッ!」


その瞬間、人混みの中から、マヒルの全身が飛び出した。

その光景に、その場の誰もがざわつき始める。


「お、おい、何だあれ……!」


そして、開門のアナウンス。


『それでは、開門いたします。走ると危ないですので、速やかに入場をお願いいたします』


そして、バリアが解けた。


「行っけーッ!」


その瞬間、マヒルが門の先、前方に飛んでいった。

それは、その場の誰よりも前に突っ込んでいった。


これこそ、『ニーナちゃん考案っ!!スペシャルお酒大作戦!!』の真骨頂。

この作戦の全て。


30万を持ったマヒルがテイムの肩を借りて(物理的な意味で)、この人混みよりも高く乗り出し、そして門が開いた瞬間、テイムがはずみをつけてマヒルを投下。

マヒルは人混みの前に、走るよりも速く躍り出ることができる。

人混みの前の方にスタンバイしていた人達は度肝を抜かれ、一瞬呆気にとられた。


一応、これも人混みの足を止めるための、作戦の一部だったりする。


マヒルは着地して、後ろを振り返った。

驚きの顔を隠せない人々。

その光景を見て、マヒルは意地の悪い笑い方をした。


勿論、そんなことをしたら全員、


「なッ、なんだあのガキャァァァ!!」


ブチギレるだろう。


人混みが急に一斉に走り出した。

その絵面は、さながらゾンビ映画である。


「ヒィー、こっわ」


その光景を見ても、マヒルはまだまだ余裕な表情でいる。

何故か?



マヒルはそのまま酒屋さかやに向かって走り出す。


アサミはその光景をどんな感情で見ていいのか分からず、ただ周りの人間と同じように呆気にとられて見ていた。

人混みが周りから消え去って気づいた。


「あれ、ニーナ……?」


さっきまでくっついていた、ニーナの姿が見えない。


(まぁ、多分ニーナも酒屋さかやに向かってるんでしょ、きっと)


そう思い、アサミも急ぐことなく歩き出した。


こんな機会、一ヶ月に一回━━いや、今回は三ヶ月ぶりだから、もっと戦争が激化したら三ヶ月じゃ済まない、もしくはもう二度と<ノア>との合体ドッキングの機会なんて来ないだろう。

だから、お土産くらいは、何か買っていきたい。


「なんかいいお土産屋無いかなー、なんて」


さっきまで人混みの中にまぎれていたのに、急に人が一人もいなくなると、なんだか寂しく感じるものだ。




少し歩いてみると、人通りのなさそうな裏路地に、ひっそりと店が構えられてるのが見えた。

しかも、見えた限り、どうやらお土産になりそうな物が売っていそうだ。


(ここなんかいいかも……)


アサミは、その店にふと立ち寄っていった。

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