開門

来たる14日。

<イカロス>全国民が待ち望んでいた日だ。

合体ドッキングしても、当たり前だが特定の出入り口しか<ノア>との架け橋は存在しない。


それは、<イカロス>北側。

第七地区の一番端の場所である。

そこには大きな機械仕掛けの門が設置されており、<ノア>と合体ドッキングした時、その門が開きその先が架け橋となっている。


そこで今、アサミ、テイム、マヒル、ニーナは食事を終わらせ、第七地区へと向かっている。


「いやぁ、食った食った〜」


ニーナはそう言いながら、腹をポンポンと叩いている。

とんでもない量のハンバーガーを食べたのにも関わらずそこまでニーナは腹が出ていない所が、アサミとしてはなんだか悔しいのだが。


「で?結局ニーナはどんくらい持ってきたのよ?」


マヒルがニーナに対して聞いた。

マヒルが聞きたいことは、勿論、財布の中身・・・・・だ。


「ざっと30万」


ニーナは目を光らせ、ドヤ顔をしながら答える。


「馬鹿かお前!?30万も酒買うのか!?」


「当たり前だろ!」


「飲みきれねえだろ!第一、賞味期限とかどうすんだよ?」


「毎日飲めばそんなん余裕だし━━」


「少しは抑えてよー、ニーナ」


マヒルのみならず、アサミにもこう言われてしまってはしょうがない。

ここは流石にニーナも引き下がった。


ま、酒を毎日飲まないわけがないんだけどね。




結構歩き、もうそろそろ<ノア>との架け橋の場所まで移動し終わるところだ。


「疲れた〜。今何時?」


ニーナは明らかに死にそうな声で聞く。

顔も真っ青だ。


答えたのはテイムだった。


「今は午後2時半だな」


「━━は?」


ニーナの顔が更に青くなっていく。

直後、ニーナは急に走り出した。


━━<ノア>との合体ドッキングは午後3時だ。


「おい、待てよニーナ!どこ行くんだよ!?」


マヒルの声は、ニーナには届いていない。

それもそのはず、必死な形相で走っているからだ。


「とっ、とにかく、俺らも追うぞ━━!」




門のある少し広い道まで走ってきたニーナは、その光景を見て、膝から崩れ落ちた。

数秒後、アサミ達も到着した。


「おいおい、なんだよ、これ━━!」


そこには、門に向かってごちゃごちゃと並んでいる人間の列━━というより、束が出来上がっていた。ざっと200人はいるだろう。


マヒルの口から小声で言葉が溢れた。


「……なぁ、去年のこの時間帯って、もうちょっと人が少なくなかったか?」


「あぁ。でも━━」


テイムは目の前の人達が門の周りに群がっている姿を見て、言い放った。


「今までお預け喰らってたからな。衝動が抑えられない気持ちもわかる」


そう。

今回の<ノア>との合体ドッキング、実は今までなら月に一回程度の周期で来ていたのだが、今回は異例の3ヶ月ぶりである。

そしてこの戦争に片足突っ込んだみたいな状況で、経済も安定しておらず、様々な物品が高くなっていた。

そんな中、全ての物品が一様に安い<ノア>との合体ドッキングが来ると言うなら、みんな血眼になって行動してしまうのも無理はない。


しかし、こちらにはまだ秘策がある。


「取り敢えず、最低ライン・・・・・まで入ってくよ」


「「了解」」


テイム、ニーナ、マヒルが団結している。

その光景を、アサミは少し羨ましく思った。




「きっっっっっっつ!」


人混みのちょうど中心に潜っていった四人だったが、何と言ってもギュウギュウ詰めだ。


テイムがなんとか時間を確認して、他の三人に伝える。


「残り一分!」


その声に、他の三人だけでなく、周りの人達も息を呑んだ。


(……せ、狭い)


しかしアサミにそんな余裕はなく、なるべく面積を狭くするためにニーナと抱きつき合っている。

何より、アサミの面積は、他よりも大きい・・・・・・・

そこで、ニーナと抱き合う・・・・ことで、胸の面積をほぼ関係なくさせようという話だ。

ニーナはただただアサミに胸の自慢をさせられているだけにしか思えないが。


そして、運命の時は来た。


上の方から、アナウンスの機械音のような声が聞こえてきた。


『まもなく、大門だいもんが開きます。危ないので、門からお下がりください』


しかし、誰も下がらない。

ここで下がってしまうような肝っ玉のやつは、ここにはいない。


新たな一つの戦い・・が始まる━━━━

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