衝撃の事実━━!

「なぁ、聞いたか!?<ノア>が来るってよ・・・・・・・・・・!」


スノウラビットの整備ハッチで誰かが話しているのが耳に飛び込んできた。


「マジか!?何円使う!?今回!」


「ただなぁ……俺今、あんまり金持ってねえんだよ……」


「うわぁ……やらかしたなぁ、それ。ま、また数カ月後には来るだろ」


「クッソぉ……」






「ということで!<ノア>の合体ドッキングが来るらしいです!!」


話を聞いていたアサミは、興奮したように急に立ち上がって、目の前のテイム、マヒル、ニーナに話しかけている。


合体ドッキングとは、言ってしまえば国と国が貿易したり別の国に行きやすくするための、ムーブパレスの制度である。

二つの、あるいは複数のムーブパレス同士が連結し、その間に国と国の架け橋が生まれる。

そのため、旅行をしなくても他国の文化に触れることができ、尚且つ、他国の製品を購入したり、お互いに貿易をしたりすることができる。


特に<イカロス>は、<ノア>との合体ドッキングを頻繁に行っており、年に10回は合体ドッキングをしている。

それほど<イカロス>と<ノア>は固い何か・・で結ばれており、その絆は異常なほどである。


そして、<イカロス>は<ノア>との合体ドッキングとなると、国民全員が興奮状態になる。

決して深い意味も卑猥な意味もなく、国民全員が興奮する。

そう、今のアサミのように。


「おっ、落ち着いてくれ。いつ来るとか知ってて言ってるのか?」


マヒルが座れというジェスチャーとともに言う。

アサミも少しは収まったらしく、ぺたんと座り直して、深呼吸してから再度、説明をしようと試みる。


「えーっと、6月の━━つまり、今月の14日に来るって話を聞きました」


「14!?」


そのアサミの話を聞いて、一人驚いたように大きな声を出した。

ニーナである。


「えっ、だって、今日が5日だよ?もうすぐじゃん……!!」


「何か買いたいものとかあるの?」


「そりゃ勿論━━」


無駄に時間を掛けてためた答えは、何というかニーナらしい答えだった。


「酒、だよ……」


「お前また酒かよ!?もっと他の飲み物飲めよ!」


マヒルが突っ込むと、


「いいだろ、俺の自由で!逆にビール以外の飲み物なんてこの世界に存在するのかよ!?」


ニーナが煽り返す。


流石のアサミも、この光景には慣れた。

テイムは何も言わず、俯いている。

話を聞いていないのかとも思ってしまうが、小さくため息を吐いていることから、これも一種の慣れの果てなのだろう。


「まァ、そんな事はともかくだよ。マヒル、テイム。今年もアレ・・に協力してくれない……?」


「またアレ・・をやるのか……」


珍しくテイムが嫌そうな表情を浮かべている。


アレ・・すると肩こりがさぁ……」


マヒルはテイム以上に嫌そうだ。


「大丈夫大丈夫。買った酒の少しはやるからさ」


「俺もテイムも酒飲めねえよ!?」


そのツッコミは、アサミ以外は理解していたものの、アサミだけ理解できていなかった。


「━━え?テイムさんって私より年上じゃないの……?」


「ん?何言ってんだよ、アサミ。テイムは19だぞ?」


ニーナの言葉に、アサミは目の前の視界がグニャンと歪んだ。

これが立ちくらみと言うやつだろうか。

まさか、テイムが自分よりも年下だなんて、思いもしなかった。

成人すらしてなかったなんて……


「は?テイム、言ってなかったのかよ?」


「そう言えば言っていなかったな。思い出すことはあったが、それを言ったところでなんになるって言うんだ……?」


「もう!そういう事は早く言ってよ!!」


アサミは少し大きな声を出してしまった。

それほどまでに、アサミ的には恥ずかしかったのだ。

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