考察

グラマス・パナ・ゴーマス、バンディック・ギルミール共ニ<アポロン>ニ帰還成功。

ヤガー・オーチ、奇襲ニヨル戦死。


ASCOFアスコフハ三機イタ模様。

バッテリー切レマデ捜索活動ヲ続行シタガ、成果ナシ。






「……なるほど。これで終わりか」


男は活動報告書をパラパラとめくった。

ワックスで綺麗にまとまりつつもかっこよさが印象に残る髪。

その軍服は、<アポロン>の軍によっての上級階級を表す。


男の名はアドルフ・アーロン。そしてアドルフが読んでいたのはグラマス、バンディック、ヤガーの、捜索後の活動報告書である。


簡単な報告書だ。

簡潔に、事実が記載されている。


しかし、アドルフはもう一枚後ろにまだめくっていない、つまり見落としのある紙があるのに気づいた。


(危ない危ない……見落としとは……俺も疲れているな……)


そして、その後ろの紙の内容を読むため、今開いているページを一枚めくった。


全てその内容を読んだアドルフには、そこに書かれていたことは到底理解できない内容だ。




今回ノ奇襲、イカロスノ奇襲デアル可能性、低イト思ワレリ。

理由ハ、以下ノ通リデアル。


・破損シタ敵ASCOFアスコフノ破片ヲ調ベタ結果、ASCOFアスコフの機体名称は『エボリューションサーモン』デアル事ガ判明。シカシ、イカロスニハ革命トイウ言葉ヲ使ウホド覚悟ノアルモノハイナイ。


・イカロスノ機体デアレバ、ノアノ武器を裏取引の粗悪品ナド使ウ必要ガ無イ。


・イカロスガ奇襲作戦ノ報復デアポロンニ来ルノナラ、イカロストアポロンの距離ト移動時間ガ合致シナイ。


・イカロスノ人間ハ、自ラ自爆デキルホドノ覚悟ヲ持ツモノハイナイト思ワレリ。




「━━『以上四点から<イカロス>の可能性は低いと思われり』、か……なるほどな。おい、マッシュ!」


マッシュというのは、アドルフの個人的秘書のマッシュ・アーマインのことである。

マッシュ・アーマインは、アドルフが一番信頼を寄せている人物であるため、このようにアドルフから真っ先に呼ばれる人物となった。

遠くからマッシュが駆け寄ってきて、アドルフのもとに膝をついた。


「やめてくれ。他人を下に見ることは慣れていない。普通に立って話してくれて構わない」


「いえ、私がこうしたいので、膝を地面につけています。アドルフ様に恥はかかせられませんので……」


「━━そうか。お前が望むなら、そういうことにしといてやろう。で、この報告書なんだが━━」


アドルフは報告書を片手でパンパンと軽く叩いた。


「ここに書いてある、敵の奇襲は、<イカロス>のものではないという話……コレは本当かね?」


「私にも分かりません。現在確認中ですが、<イカロス>以外の国の奇襲であることも考慮しながら確認作業を進めています。━━お力になれず、申し訳ありません……」


「いや、大丈夫だ。マッシュが謝ることではない。━━そうか、まだわからないか……」


(可能性として考えられるのは、<イカロス>、<アレス>、<バンシー>……<ノア>である線は捨てていいだろうな。自国の粗悪品をわざわざ使うとは考えにくいし、何より<ノア>は平和を望む国・・・・・・……奇襲は愚か、戦争にも参加しないだろうな)


となると、どの国なんだ?

まったくもってアドルフには見当がつかなかった。

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