五体満足にはさせない

「やることはひとつだろ━━?」


バンディックのナイトモスキートは、思いっきり敵ASCOFアスコフのことを殴った。

殴った場所は目を瞑りながら殴ったためよく理解していなかったが、どうやら頭を殴ったらしい。

ASCOFアスコフの頭が凹んでいた。


どうやら敵も状況を先程のパンチで理解したらしく、今度は逆に、


”ガシャァァン”


殴り返してきた。

しかもコックピットルームのある胸部分を的確に狙って。


「やったな、クソォ!」


”ガシャァァン”


バンディックも、それに負けじと殴り返す。

今度はバンディックも胸を狙えていたようだ。


お互いのASCOFアスコフの胸に、大きな凹みが一つずつ。


さぁ、インファイトの開始だ。






クラッシュライノス。

掌から煙が出たのには、理由がある。


それは、熱による蒸発。

そう。


クラッシュライノスは、掌に熱圧縮機構が備わっている。

いや、正確には、だ。


なんと、クラッシュライノスには、


そのため、掌は愚か、クラッシュライノスに触れただけで敵は溶けてしまう。


それこそが、クラッシュライノスの個性である。




蒸発する仲間のコックピットを見ていたからか、もう一機のASCOFアスコフは逃げようとしている。


「逃がすわけねぇだろうがァ!!」


クラッシュライノスはバーニアを吹かした。


逃げていた敵ASCOFアスコフどんどん追いついていく。


遅い。

あまりにも遅い。


グラマスはその遅さに思わず思う。


(ヤガー中尉はこんな遅いやつにやられたのか。こりゃ、ヤガーは天国でも文句言えないな)


グラマスは微笑していた。

クラッシュライノスが速く移動しているにも関わらず、体にはその速さによる負荷はあまり感じられなかった。

アドレナリンというやつだろうか。

実際、あまり周りが見えない。


今は、目の前の名前も知らないを殺すことしか考えることができない。


気づいたら、追いついていた。

追いつくまで数秒しか、かからなかった。

それでも敵ASCOFアスコフは必死にバーニアを吹かしながら逃げている。


グラマスは思わずため息を漏らしてしまった。


「あのさぁ、もう時間の無駄だから止まれよ。雑魚の分際で」


グラマスは苛立ちのまま、敵ASCOFアスコフの頭を掴み、そのまま剥ぎ取った。

ASCOFアスコフは頭が取れた勢いで少し吹き飛ぶが、そんな事関係ない。


「てめぇを殺したくて殺したくてたまんねえけどよォ。一応、お前のことを捕獲させてもらうぞ」


そう言うと、今度は右腕をちぎって投げ捨てた。

右腕のあった場所から様々な破片が飛んでいる。


今度は左腕を掴み、熱によって付け根を溶かした。


「コレがついてたらまた逃げられるか……」


そう言ってバーニアも外した。

バックパックは投げ捨てられ、そのままふわふわと浮かんでいる。


そして最後に腰から先を引きちぎった。


ASCOFアスコフは、最早、四肢のパーツ全てが取れ、体だけが残っていた。

コックピットだけを残せばいい。

コックピットが残っていれば、基本的なそのASCOFアスコフの情報は大抵分かる。


その敵ASCOFアスコフを見ていて、段々とグラマスに正気が戻っていく。

冷静さが欠けていた。

良くない行動だ。


グラマスは頭を抑えながら、反省する。


「フーッ……てめぇの仲間を今から殺しに行ってくる。それまでここで待ってろ」


ASCOFアスコフのマップ機能に今いる場所にピンを設定し、この敵ASCOFアスコフを見失わないようにする。


そして、クラッシュライノスはバーニアを吹かしながらバンディックの元へと向かっていった。

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