弔いの作戦会議
<イカロス>宙域の手前のデブリの山。
その中に密かに息を潜めている
覚えているだろうか。テイムのバーストタイガーが墜とした<アポロン>の
「━━おかしい」
隊長のリボウル・ハルバードが言う。
リボウル・ハルバード。
<アポロン>の
今までで一番大きな功績はなにかと言われれば特になにもないが、逆に認知されていないことによって敵との戦闘で予想外な戦術をとってもそもそも警戒されていないため対策すらされていないというのを彼は利点と考えているほどだ。
そんな彼でさえ何かがおかしいと思えてくるほどの異常事態とは何なのか。
第7部隊の一人、ゲルク・テラフィが聞き返した。
「一体、何がおかしいんです?」
『どう考えても今頃はビルークとエレンが帰ってきていてもおかしくはないはずなんだがな。残念ながら帰ってきていない。ここは戦死と仮定するのがいいだろう』
「━━ッ!そんなッ!」
そりゃ、リボウルも自分の部隊の隊員が死んで悔しくないわけがない。
だが、その屍の意味を考えるのが、せめてもの弔いというやつなのだろうか。いや、多分それは違うのだろう。
気持ちを切り替える意味も兼ねて、隊員二人に軽い指示を出した。
「<イカロス>を見てみろ」
ゲルクは疑問に思ったまま、
「……特に異変はありませんが……?」
「だろうな。異変が無いことが、逆に良くないんだ。考えてみろ。
「━━ってことは、あの二人は何か大きな脅威によって堕とされたということですか?まさか、ありえない」
「そう思いたくなる気持ちもわかる。俺も信じたくはないが、今まで
「じゃあ、俺らはどうすれば!?」
「そうですよ!こんなところにいたって、エレンもビルークも帰ってこない!」
「そうはしゃぐな。それに、このまま帰るわけもないだろ。
リボウルから感じ取れる空気感に圧倒された残り二人は、ほぼ同時に唾を飲んでいたことに気づくわけもない。
「━━威力偵察だ。残り、俺を含めた三人は死ぬ必要はない。だが、<イカロス>内部に侵入し、敵
(こ、これが、二人への弔い……なのか……)
(ここまで来たらどこまででもやってやる!<アポロン>のため!そう考えただけでやる気が出るなァ!)
「「俺らは、行けます!!」」
二人の声が重なった。
リボウルの評価が一番高くなった瞬間であった。
たまにはこうして、他人からの評価を少しは気にしてみるのもいいかもしれない思ったが、この心内が知られるのはなんだか恥ずかしい。
だから、最後の最後までリボウルは強がる。
ここで弱い格好を見せては、
「あぁ。良い返事だ。では、行くぞ」
「「了解ッ!」」
”ゴオオオオオオオオ”
ナイトモスキートの背中のバックパックが展開、そして勢いよく前進を始めた。
2機のナイトモスキート、そしてリボウルの専用機体。
これから始まるのは、弔いと大切なものを守る為の、初の全面戦闘だ。
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