虎と蚊の戦い

散弾銃。俗に言う、ショットガンである。

近距離から中距離に有効な武器であり、特徴はなんと言っても発射後に飛び散り、拡散する『ペレット』である。

そしてこのテムル222はテムル社が作った次世代ショットガンであり、弾速、射程、次弾装填速度が優れており、何よりも軽く、軍事関係の人間からは評価の高い、良武器である。

しかも拡散力も調整できるというおまけ付きだ。




しかし、相手からすればそんなことは関係のない話である。

ビルークとエレンは、十メートルをも超えるASCOFナイトモスキートを素早く回避させた。


エレンはこの状況を、逆に好機と捉えた。


敵機の右腕は、テムル222を握っていて今から別の武装に切り替えることは不可能。左腕は何も握っていないが、今から背中のバックパックにASCOFアスコフの手を伸ばし、別の武装を手に取る時間の内に温まったナイトモスキートのヒート・スピアーで突撃すれば、敵のASCOFバーストタイガーを倒せる。


考えるよりも動け、だ。


エレンのナイトモスキートは背中のマントとも取れるバックパックの羽を展開させ、そのままバーニアノズルに火を点火させた。


”‬ゴオオオオオオオオ”‬


「お前はもう負けだァ!〈イカロス〉のASCOFアスコフッ!」


ナイトモスキートはヒート・スピアーを構え、バーストタイガーに向かって突撃する。

それ・・をモニター越しに観察していたテイム・プロスルはニヤリと笑った。


バーストタイガーはテムル222を横に投げ捨てた。

テムル222が無重力空間でふわりふわりと浮かんでいるのを横目に、テイムは一つの兵器を起動させるスイッチを押した。

すると右腕から二爪にそうの爪が手を中心に180度回転して飛び出した。


「つッ、爪だとォ!?」


突っ込んでくるナイトモスキートの右腕を、いとも容易く爪で切り捨てた。

ナイトモスキートの肩より先が宇宙空間に漂い、肩から先が爆発した。


”‬ボゴオオオオオオン”‬


静かで音もない宇宙に、爆発音だけが異様に響く。

しかしそれでもバーストタイガーは止まらない。

今度はビルークのナイトモスキートへと、とてつもない速さで近づいていく。


”‬グオオオオオオッッッ”‬


ビルークはその速さに驚くも、すぐさまヒート・スピアーを構え、バーストタイガーに向けて渾身の一突きをした。

しかしそのヒート・スピアーはバーストタイガーの体に触れるよりも速く、バーストタイガーの爪で切り捨てられた。そのまま、鋭利な先端が切り捨てられたヒート・スピアーを左腕で掴み、右腕の二爪にそうの爪でビルークのナイトモスキートの頭を貫いた。

直後に、そのままナイトモスキートの体を脚で蹴り捨てた。

その蹴りで後ろに吹き飛んだナイトモスキートの頭が爆発した。


”‬ドガアアアアア”‬


「ぐァァァァァァ!!」


ビルークは機体の中で叫んだ。

モニターは頭を壊された影響で暗闇と化し、脚で蹴り飛ばされた時の揺れでビルークはヘルメットの中で嘔吐した。

ビルークは必死にヘルメットを脱ぎ捨て、コントロールマウス(ASCOFを操作する為のレバーの様なもの)を押し込んだ。

何も見えない中、バーストタイガーを掻い潜り、エレンのナイトモスキートの元まで駆け抜けようとしたのだ。


「うォッ!?」


その行動にテイムは少し驚き、反応が遅れ、駆け抜けていくナイトモスキートに向かって爪を振るうもナイトモスキートの右羽しか斬れず、そのままビルークのナイトモスキートはエレンのナイトモスキートの元までたどり着いた。

エレンのナイトモスキートがビルークのナイトモスキートの腕を掴むと、二人は小隊チャンネルで話し始める。


「大丈夫か!?ビルーク!?」


「ああ……何とかな…はぁっはぁっ。クソッ。何なんだ、あのASCOFアスコフは……まるで化け物だッ……」


その会話はテイムには届いておらず、テイムは止めをさせなかった悔しさに葛藤していた。

しかし、そうも言ってられない。

戦況は着々と進んでいる。


「切り替えよう……あのASCOFナイトモスキートを倒すのにアーム・・・・ヒート・・・・・クロー・・・・もいいが、やっぱり、バースト・・・・フレイマー・・・・にも慣れておかないとな……」

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