戦いの火蓋

イカロス軍事司令部。薄暗い部屋には明かりのついたモニターが壁をビッシリと埋めている。

そんな薄暗く静かな部屋のモニターに、


”‬ピピピピピピピ︎︎”‬


入電が入った。

入電の入ったモニターが少し明るくなり、そのモニターの前に座っている兵士が入電の内容を読み上げる。


「入電!入電!観測班からの情報!サーモセンサーに熱源反応!数2!〈アポロン〉のASCOFアスコフと思われます!」


司令部がその入電にザワつきだす。

敵襲に慣れていない〈イカロス〉の人間は、こういうアラートですら、動揺の原因となりうる。

しかし、一人の冷静な声がその場を沈静化させた。


「落ち着け!俺が出る!」


その男は、若く、細身の好青年という感じだ。パイロットスーツを既に着用しており、準備は万端という感じだ。

軍隊長が渋い顔をしながら、重い口を開いた。


「……出撃を許可する」


それを聞いた男はすぐさま司令室から出ていった。




〈イカロス〉近くの宙域には、灰色をベースとし、所々に黒いパネルのあるASCOFアスコフ━━人型機動兵器がある。

このASCOFアスコフはナイトモスキート。〈アポロン〉が誇る、小型量産機である。

ナイトモスキートの背中のバックパック部位がマントのように展開し、その中のバーニアが火を吹かした。


”‬ゴオオオオオオオオ”‬


二機のナイトモスキートが〈イカロス〉に突撃しようと接近する途中、小隊長から連絡が入った。


”‬ピピッ”‬


『ビルーク。そっちはどうだ?』


「順調に〈イカロス〉に近づいています」


『でも、油断するなよ。なんせ〈イカロス〉には━━』


”‬ピピッ”‬


小隊長が言いかけて、ナイトモスキートにレーダー反応が確認された。


「この熱反応……〈イカロス〉のASCOFアスコフです!」


すると、小隊長が急に焦ったような早口と大きな声で確認を取った。


『色だ!色を見ろ!』


「…色?三番機、敵ASCOFアスコフの色を見ろ」


二番機が三番機に対して命令すると、三番機のエレンはズーム機能を使い、接近してくるASCOFアスコフの色を確認した。


「色……赤と…金です」


小隊長の焦りが限界に到達した。


『逃げろ!そのASCOFアスコフには勝てない!』


しかし、レーダーの敵ASCOFアスコフの熱反応の点を見て、最早逃げるのは不可能と分かった。

とてつもなく速いのだ。

二番機のビルークはナイトモスキートのコックピットの小さなマイクに向かって叫んだ。


「無理です!接敵します!」


そう言うと、ビルークとエレンのナイトモスキートは、手に握るヒート・スピアーの熱圧縮装置のスイッチを解除した。




赤と金の機体の中にいる、先程のパイロットスーツの好青年は思う。


(おっ、逃げないのか……)


先ほど出撃し、赤と金の機体━━バーストタイガーを駆る彼こそ、〈イカロス〉が誇る最強のエースパイロット、

テイム・プロスルである。


”‬キィンッ”‬


手に装着する熱圧縮装置のセーフティを解除し、更に背中から銃を取り出し、その装備の熱圧縮装置のセーフティも解除する。その銃はバックパックに戻し、先程とは別の銃を取り出した。

ナイトモスキート二機は、すぐそこである。


銃━━テムル222を構えた。


そしてそのままナイトモスキート二機に対して、テムル222の引き金を引いた。

その銃から出てくる弾を見たビルークとエレンはコックピットな中で目を見開いて驚いた。


「「散弾!?」」

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