第9話 もっと格上を撃沈させる
「うふふふ、望むところね。どれだけ獲物を狩るかで勝敗を決めますわよ」
「うぎゃ!」
突然始まったナンチャッテ頂上決定戦。これに僕もびっくりだ。
「待ちなよ、イオナ。君だって元々そんなに強くないでしょ? 僕やエブリンだって、スライムを倒すのがやっとだ。いくらバフがあるからって、調子にのっちゃダメだよ」
「ですが、この力を試すいい機会ですよ?」
すがるように聞いてくる。
「そ、それでもだよ。この森には、スライムの上をいくFランクのリザードマンだっているんだ。それを……って、あれ、エブリンはどこ?」
すると遠くの方から、エブリンの声が聞こえてきた。
「おーい、お待たせぎゃーーー」
「もう途中で居なくならないでよ。心配するじゃないか」
「ごめん、ごめん。でもいいのを見つけたぎゃよ」
エブリンは褒めてと言わんばかりに、頭を突き出してくる。
しかし思い当たるふしはない。
だけどその理由を聞くまえに、答えがわかってしまったんだ。
それは3mを超える巨大なイノシシ、ギガントボアが目の前に現れたからだ。
『フゴーッ、フフゴーーーーッ!』
「ウソでしょ、なんでこんな浅いエリアにいるのさ!」
2人の仲裁で頭がいっぱいだったから、スピードの速い展開に追いつかない。
でも、ギガントボアは前のめりだ。
「ギガントボア、静まるんだ。僕の話を聞け」
『ぶっふーっ、絶対許さんぷぎーーーー!』
ダメだ。こちらの声が届いていない。でも、あそこまで怒り、怨みがましい目つきだなんておかしい。
「エブリン、あの怒っている理由に心当たりはないかい?」
「うぎゃ、お腹空いていたから、ちょこっと
テヘッと笑っている。
「それだよ、それ! それが原因で、無限追跡者のスイッチが入ったんだよおおおおぉぉ」
僕の叫びに、エブリンは『えっ!』って顔をしている。
ギガントボアは格上も格上。2つも上のEランクだ。よくもまあ、かじりついたよ
そのギガントボアが前足を蹴り、勢いをつけて突っ込んできた。
それをエブリンは間一髪で避けている。
『避けるなあああああ、ふごっふごおおお』
木々をなぎ倒しても、ギガントボアの興奮は収まらない。
向きを変え、今度は逃がさないと言わんばかりに、ゆっくりと睨んできた。
「仕方ない、2人とも構えて!」
「「はい!」」
スライムの時とは状況が違う。
格もダンチだし、逃げれる可能性もなく、守る仲間も増えている。
しかし。
「ギッタギタにして差し上げますわ」
「うぎゃ、今夜は焼き肉パーティーぎゃ!」
その分、頼れる心の拠りどころは強くなった。
「2人を信じるから、君たちも僕を信じて!」
それにニコッと返してきたイオナが、先手をとった。
「いきますわ、セイントアロー」
ズババババッと無数の魔法矢が飛んでいき、ギガントボアを貫いた。
「あわわわ、威力も数も桁違いですわ!」
イオナは僕からのバフで威力の上がったこの結果に、呆然としている。
ギガントボアはふらつきながらも、その隙を見逃さず、標的をイオナにかえていた。
しかし、イオナは自分の力に興奮していて、相手の動きに気づいていない。
「あぶないよ、イオナ。こら、ギガントボアそっちへ行くな!」
僕のヘロヘロ投てき。小石でのダメージを与えるなんて無理だ。
でもその内の1つが運良く目玉にヒット。
ギガントボアの注意を、反らすことができた。
『イ、イ、イラつくぷぎーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
ただ反らす事は成功したけど、その恨みはがっちりホールド。
もう僕だけしか目に映っていないようだ。
『ぶっ殺してやるぷぎーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
「ははっ、えっと、そこまで?」
よこっ飛びで間一髪。冷や汗ってこんなにも出るんだと、初めて知ったよ。
そんな僕との間に、エブリンが割って入ってくれた。
「ヘイヘイ、うり坊ちゃん。あんたの相手は私ぎゃ」
『ぶっ殺してやるぷぎーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
「芸がないぎゃ。いくよ、エブリーンキーック!」
ボッコーーンと下っ腹を蹴りあげる。
体はへの字になり、そのまま崩れおち動かなくなった。
電光石火の戦いだった。
「うそ、Eランクを、た、倒したの?」
お腹はへこんだままだし、息をしていない。
「き、奇跡だあああああああああああああああ。格上相手にこれだなんて、良かったよ。これも僕らの絆が…………あれ?」
2人に駆けよりハイタッチ。が、あげた手に2人は何もしてこない。
大物を倒した余韻に浸る僕。だけど、2人は違ったんだ。
不敵な笑いで、ガンを飛ばしあっている。女の子のすることじゃないよ。
「これで私が1点リードぎゃ」
これに僕の顔がこわばる。だけど、イオナはエブリンの煽りにのっかった。
「ふん、さっきので感覚はつかめましたわ。せいぜい、うぎゃうぎゃ言っていなさい」
「そっちこそ、あの量に潰されないようにするぎゃよ」
指さす方向にはなんと、ギガントボアの群れがいた。
『フゴーッ、フゴーッ、許さんぷぎー!』
全て興奮していて、無限追跡者ゾーンに入っているよ。
頭が真っ白だ。いや、2人とも思い出してほしい。僕らはスライムにすら手こずるんだよ。
どうして、そんな無謀なことができるのさ。
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