第7話 その頃のトランプ(ざまぁ)①

 ワシの名はトランプ・ジョーカー・コーナルド。

 テイマーギルドのえあるギルドマスター様だ。


「ふぅー、やっと邪魔者がいなくなったわい」


 ワシは安堵のため息を心の底からついた。


 なにせ前ギルマスは、従魔ナシのボンクラに、凄い能力があると信じてしまっていたのだ。


『あの子のもつ加護の効果は最強じゃ、それを他に取られてはイカンぞ』


 全くもって馬鹿らしい。そんな事があるはずなく、このジジイはボケてしまったようだ。


 そしてこともあろうか、このワシを差し置いて、次期ギルマスにさせたいとほざいたのだ。


 あの時は思わず大声を出してしまった。


『な、な、ななななな! ……ああ、そ、それは素晴らしいですな。それでしたらこのトランプが手続きを進めておきます。あっ、いや、ギルマスが動くことは一切ございませんぞ。ガハハハハ』


 危なかったわい。マジでブチ切れそうになったな。

 だがそこをなんとか踏みとどめれた。


 痴ほう症が入ったギルマスには、早々に田舎に引っ込んでもらい、ワシは自分がギルマスになるため忙しく動いたのだ。


 ギルド役員に賄賂を贈ったり、人を雇って脅しも効果的だったな。

 あと王族の前で裸踊りをしたりと、ギルマスになるならと文字通りに何でもやった。


 そして晴れてギルマスに就任できたのだ。


 ここからはワシの時代の到来だ。

 この地位を利用して、どんな汚い手をつかってでも大儲けしてやるわい。


 そう志を高くもったのに、いきなり壁にぶち当たった。


 それは従魔たちが、宿舎で暴れまくっているのだ。


「痛ったぁぁあぁあ。クソ従魔どもめ、やめんか。これ以上は許さんぞぉぉお」


 ワシは一喝するが、一向に静まりやがらない。

 そのくせ従魔の通訳が駆けつけると、少しだけ静かになりおった。


「トランプさん、彼らはワンダーボーイを追い出した事に怒っています。謝罪と撤回をせよとのことです」


 通訳からのあまりにも不愉快なセリフに、ワシは耳を疑った。

 クズの味方をする者が、まだいたのだ。


「あんな最弱なクソ人間に同情をするな。偉大なワシがいれば充分だろ」


 と、ワシの金言を授けてやったのに、従魔たちは好き放題いいやがる。


『クソ人間はお前だろ。前ギルマスだって次のギルマスは、ワンダーボーイくんにって言っていたのに、なんでお前がなっているんだよ』


『そうだ、そうだ。不正ばかりして、金がそんなに大事なのか?』


「と言ってますよ?」と、睨んでくる通訳。


「な、な、何故それを知っているうぅぅぅう? はっ、ちがう。断じて事実無根だ、ワシが託されたのが真実だ。そんなウソ、恥を知れぇぇぇええええ!」


 頭が真っ白だ。あの時だれもいなかったはず。

 それを知っているはずがない。


『バカかよ、俺らが近くにいただろ。全部聞いていたんだよ』


『それを隠しやがってぇ、卑怯者め。この、この、このー』


「だそうです」と、呆れ顔。


「痛いーーーーーーー、やめんか、尻がもげるうううううううううううううううう!」


 ワシの尻をくわえ、右へ左へと振り回す。


「ぎゃああぁぁぁあ。クソッ、全てワンダーボーイの責任だ。アイツは絶対許さんぞぉぉぉおおぉぉ」


『ワンダくんの悪口をいうな!』


「と、みんな口をそろえて言っています」


 所詮は獣だ、分かっていない。真実をいうのは悪口ではなく、ただの事実確認だ。それをわからせてやる。


「あんな無能で嘘つきのドコがいい。それにヤツは自分から出ていったのだぞ」


『嘘つきめ。お前が酷い事を言ったのを聞いているんだ。あれじゃあ、ワンダくんが可哀想だよ』


『それにワンダくんがいなかったら、極楽効果の加護でのサポートが受けられないじゃないか。おれらの負担だって倍増だよ!』


「と、私も同じく思います」と、通訳も乗っかってきやがった。


「はあ? お前らなど嫌っていたのだぞ。それが証拠にアイサツもなかっただろうが」


 元来、ワシは上を敬い下の者には愛のムチを食らわしてやるのが信条。

 下の者はワシから、どんな事をされても文句を言える立場ではない。

 例えそれが大嘘であってもだ。


 しかし。


「おい、今の言葉は聞き捨てならんのぅ。もう一度言ってみろや」


「と、おそれ多くもマンティコラの旦那がおっしゃっています」


 出てきたのは、人語を操る風格たっぷりの従魔の古株だ。


「ワンダくんがワシらを嫌っていただと? なぁ、トランプよ。テメェ~死ぬか?」


「と、仰られています」


 鋭い眼光で睨まれ、警戒音が頭の中で鳴り響く。逆らうべき相手ではないと。


 元来、ワシは上には媚びへつらうタイプ。慌てて訂正し、五体投地をし、卑屈な顔も忘れない。


 これで全て乗りきってきた。


「素直じゃねぇか。だったら、こいつらにもちゃんと謝罪出来るよな? それと通訳、ワシのは訳さんでええど」


「と、仰りますか。とほほほっ」


 その相手とは、有効活用してやったグリフィンと、生意気にも逆らってきたユニコーンだ。


 2体は感謝もせずにワシを睨みつけ、無言の圧力をかけてくる。


「うぐぐぐぐうぅぅうう、クソ従魔どもめ」


 だけどワシが謝罪する必要性がない。なぜなら2体は格下だからだ。

 しかしマンティコラは怖い。黙って帰りそうにないな。


 だが所詮は獣、ワシの演技で煙にまいてやるわい。


「ぐごごごおぉぉ、この度はー、俺に非はないのだが、その可能性もあるかもで、ぐぐぐっ。謝罪しろと言うのなら、その気がないこともないとだけ言っておこう。ふぅ、ふぅ、はあーーー。どうだ、これで気が済んだだろ」


 会心の謝罪だな。これで解決、ガハハハハ。


『おい、それのどこが反省しているんだよ、ふざけんな』

『マンティコラさん、俺らこんなヤツ許せませんよ』


「ゴラッ、トランプ。ようもワシの顔を潰してくれたのぅ。死ぬ覚悟できとんじゃのう?」


「ヒィィイイィィイ! ちゃんと謝ったじゃないか、何が不満なのだあああ」


 頭がおかしい連中だ。いや、この高貴なワシと、同等なレベルを期待したのが間違いなのか?


 謝っているのに、煽っているのかどっちだよと非難の嵐だ。

 そして、理不尽な要求は度を超えてきた。


『もうこうなったら、ストライキだ! にせ者ギルマスの横暴を許すな』


『そうだ、そうだ。我らのワンダくんを取り戻そう』


「ギルマス、ストライキはマズイです。信用と収入が落っこちます。違約金も出てきますよ」


 通訳が慌てて告げてくる。


「い、違約金だとーー!」


 お金が大好きなワシにとったら一大事。大量の汗がふきだしてきた。


「それはダメだ。命令だあああぁぁ、仕事だけはしやがれえぇ。後生だよ。謝るかもしれない、本当にだ。仕事をしてくれたら、ちゃんと謝るつもりがない事もないからあああ」


 こんなにも誠心誠意伝えているのに、従魔たちは世話になった事もわすれていやがる。


『心底、軽蔑するよ。にせ者ギルマスさん。もうアンタはおしまいさ。グッバイ、お疲れちゃ~ん』


 自分勝手な従魔に呆れるが、このままにできないぞ。


「たーのーむーからぁぁぁああぁぁあ、仕事だけはやりやがれえええええぇぇぇえ。ワシに入る金を1G《ゴールド》も減らすなあああああああああ!」


 クソ、クソ、クソ、クソ、クソーーーーーーーーーーーーーーー、去っていきおった!


 今にみておれ、どんな手を使ってでも、やつら全員言うことを聞かせてやるからな。




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【あとがき】


 読んで頂きありがとうございます。いかがでしたでしょうか?


「面白かった!」


「トランプ」


「まあ頑張れよ」


 と思ったら、【ぜひ作者に勇気を与えて下さい】

 レビューでのお星評価や、ブックマークをしてもらえると、本当に嬉しいです。執筆に力がはかどります。




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読んでもらいありがとうございます。いかがでしたか?


報告ですが、▶2022年9月26日(月)◀に新作を出したいと思います。


題名


『苦レスLife~レベルが上がらなくても最強を望める異世界転移~その力で世界と自分をかえていく!』


また稚拙な物になるかもですが、良かったら読んで下さい。


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