第75話
次に目を覚ました時には救急車やパトカーが沢山来ていた。そして担架で運ばれていく人たち。
私だけ放置され、そこから動けないまま。
誰か早く来てくれないかなと思いながらも動けないし声も出せなかった。
しかし、どれだけ待っても結局誰も私に気付いてはくれなかった‥‥。
寒い夜を過ごしながら数日が経過したある日、交差点には柊生の姿があった。
私は柊生にむかって叫んだ。
「柊生!こっちだよ!動けないの!」
しかし、柊生は聞こえていないのかこちらを向かない。
「柊生ー!」
手を振っても気付いてくれない。
なんで気付いてくれないんだろう。よくよく見ると柊生は手に何か持っていた。花だ。
そして、それを交差点の端に置いた柊生は下を向いたまま膝から崩れ落ちた。
私の耳には柊生の嗚咽だけが響き渡っていた。
私はその瞬間全てを悟った。
柊生の泣き崩れる姿が脳裏に焼き付き、胸が張り裂けそうだった。
柊生ごめん‥‥。幸せにしてあげられなかったね。結局私は誰も幸せに出来なかった。
私はここで毎日訪れる柊生の姿を見ることしか出来なくなってしまっていた。
そのうち柊生や家族、友達の姿も見かけなくなり、どこにも行けず、ずっとここにいる。
しかし、不思議と気持ちは楽になっていた。それほど私の心は疲れ切っていたのだろう。
心のどこかでもう終わりにしたかったのかもしれない。
何が私を縛り付けていたのか。
夢も叶わず、大事な人を失い、大切な人を泣かせ、何の為に生まれてきたのだろうか。
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