第8話
クリスマスから一週間が過ぎ、気付けば年を越していた。あれから柊生は連絡してこなくなった。もちろん店にも来なくなり、一応付き合ってはいたけど、自然消滅かななんて他人事のように思ってた。
私はあまり執着しないタイプで去るもの追わない主義だから、というよりもそこまで柊生にのめり込んでなかったのかも‥‥。
「もしかして彼氏と別れた?」
毎日のように来ていた柊生が急に来なくなり、流石に冬馬さんも気付いたようだ。
「いわゆる自然消滅です」
「そうなんだ、残念だね」
「あまり気にしてないですよ」
「クールなんだね」
「元々そこまで好きじゃなかったのかも」
「応援してたのになぁ」
少し残念そうに話す冬馬さん。
「そう言えば冬馬さんって彼女さんとかいるんですか?」
「俺の事はいいの」
冬馬さんはあまり自分の事を話さない。
いつも話を逸らしてくる。
「少しくらい教えてくれてもいいんじゃないですか?」
私がそう言うと左上を見ながら少し考え、こう答えた。
「彼女はいないよ」
あれだけ何も教えてくれなかったのに今日は教えてくれるんだと思い、さらに突っ込んだ事を聞いてみた。
「じゃあ好きな人は?」
「うーん、気になる人はいるかな」
「そうなんですか?どんな人ですか?」
「はい、これ以上は言わないよ」
冬馬さんはそう言うと笑いながら店内の掃除を始めた。別に冬馬さんに興味があるわけではないが、話の流れとして聞いただけだ。
しばらくは何もなく平凡な日々が続いていた1月下旬。その日もいつものようにバイトを終え閉店作業をしていた。
「雪やばいね」
冬馬さんが外を見ながら言った。
「本当ですね、あっ!」
私は急いでスマホを開いた。
「やっば‥‥」
「どうしたの?」
「電車止まってます」
大雪の影響で電車がストップしていたのだ。歩いて帰るしかないなと思っていたところで冬馬さんがロールカーテンを下ろしながら言った。
「うち来る?」
うち来る?は恋人が言う事なんだよなぁ。と思いながらも少し引いている自分がいた。
「いや、それは流石に‥‥」
「ももちゃんは今帰宅困難者なんだよ?この雪で歩いて帰ってたら死ぬよ?」
「それはそうなんですけど‥‥冬馬さん一人暮らしですよね?そこにお邪魔するのは‥‥ね?」
「もしかして変なこと考えてる?」
「考えてないですよ!」
「じゃあ決まりね!親御さんにはちゃんと連絡しとくんだよ」
連絡しとくんだよって言われても、店長の家に泊まりますって言えるわけもなく、結局友達の家に泊まると連絡した。
断りきれなかった自分も悪いけど状況が状況なだけに結局こうするしかなかったんだと自分に言い聞かせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます