第38話 拝啓、3年前のわたしへ

 3年前のわたしよ。

 あやつはやりましたよね、あれだけ難解なテーマを不器用なりの文章で見事に描いて見せました。どんな矛盾に進めなくなっても、湯水のようにあった時間を惜しみなくそそぎ、どこまでも深くにもぐって答えを探しだしました。


 今の私にはどれも難しいことです。同じテーマでは書けませんし、時間は限られ、周囲の環境が集中を許してくれません。現に向かうと言った机にすらいまだ座らせてもらえていないのです。

 ある意味私が欲する逆境ではあるのですが。でも決して望んだものではなく、渦中に放りこまれたものです。


 ああ。どこかに精神と時の部屋が売っていないでしょうか。


 書く意欲はあり、時間はなく、他にやらなければならないことはあり、いざ書こうとなってもアイデアはなし。

 思考を割く時間もすごく減りました。考えなければならない些事が多く、しなければならないことは山積で。


 あの6万字を仕上げればよいだけなんです。でも今はまだその時ではないと、過去のわたしが引きとめているのが見えます。迷ったまま書くんじゃないと。


 3年前のわたしよ。

 あなたのようになるにはどうしたらよいのでしょうね。闇雲にヘッタクソな文章を量産し続けた、あのガムシャラな日々はどうやったら戻ってくるでしょうか。

 こうやって弱音をはいている時点で、鼻で笑われているのが見えるようです。

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