082:エイリアンとオーパーツ④
「この階層は次のエリアで最後みたいね」
ヴィータと元魔王たちという圧倒的な戦力はエイリアンを蹂躙しながらダンジョンを進み、ついに階層で最後の調査ポイントとなる巨大な遺跡へとたどり着いた。
「マキナは集まったが、やはりオーパーツは簡単には見つからないな!」
「そうね。だけどジャンクパーツはいくつか回収できたから、充分な成果よ。お姉さまの研究に役立つと良いんだけど」
「大賢者は何でも知っている。オーパーツはウルトラレアアイテム。そう簡単には手に入らない」
「そうなのか」
現れるエイリアンを瞬殺してはマキナを回収し、遺跡を調査しながら更に奥へと進んで来た。
だが目的のオーパーツは中々見つからないようだった。
たまにエノンが良く分からないパーツを回収していたが、それもオーパーツの部品だったらしい。
オーパーツの一つであるワープポータルは、人間界では伝説を超えてもはや架空のアイテムだと思われていたくらいだった。
人間界ほどではないにしても、魔界でもかなり貴重なアイテムのようだ。
「座標もまだ見つかっていないし、気を引き締めましょう」
「座標?」
「さらに下の階層へワープするために必要なんだ。このダンジョンには各階層をつなぐ道すらないからな!」
「そうなのか」
人間界のダンジョンではそんなダンジョン見たこともなかった。
どうやら魔界のダンジョンとは敵のレベルだけでなく、ダンジョンその物の攻略難易度が高いらしい。
「座標はマキナに刻まれているらしいんだけど、階層のエリアボスが持っている事が多いわね」
「へぇ。何でなんだろうな?」
「我にも分からない!」
オトワはなぜか自慢げに胸を揺らした。
「マインは知ってるのか?」
「大賢者は何でも知っている。その理由は……………………………………」
ヴィータはなんとなく気になって「何でも知っている」大賢者に聞いてみたが、マインはそこでフリーズしてしまった。
そしてなぜかエノンに怒られた。
「ちょっと人間! 難しい質問でお姉さまをフリーズさせるんじゃないわよ!?」
「何でも知ってるんじゃないのか……!?」
「当たり前でしょ! お姉さまは何でも知ってるわ! でも一度に思い出せる量には限度があるのよ!」
「なにそのシステム!?」
「ゾンビなんだから仕方ないでしょ!?」
最後の遺跡の前でヴィータ達がそんな緊張感の欠片もないやり取りをしていると、エイリアンがそれに気が付いて姿を現した。
「オガァアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァ……!!」
ガゴン、バキン。
地鳴りのような野太い声と共に、遺跡の入り口を破壊しながら現れたのはゴブリンリーダーよりもさらに巨大な身体のエイリアンだった。
浅黒い赤みがかった肌は筋肉で盛り上がり、頭部には黒光りする一対の大きな角が生えている。
オーガ。
巨大な身体と桁外れの怪力を持つ亜人で、ジャイアントと呼ばれる種族の中でも特に狂暴な個体である。
人間界でもAランク越えの危険な相手だ。
ゴブリンの強さから考えれば、魔界のオーガはSランクを超える危険度でもおかしくない。
だが、魔王たちは余裕の笑みでオーガと相対する。
「最後にエリアボスの登場か。ふむ、ダーリンにもっと我の力を見せるのにちょうどいい相手だな!」
「ちょっとオトワ、次はアタシの番でしょ? アタシだってまだ人間に本気を見せてないんだから!」
「なんだ、エノンもダーリンに褒めてほしいのか? ダーリンの手は意外と大きいんだぞ♡」
「ち、ちがうわよ!? ただアタシの実力を見せつけたいだけなんだからね!? ま、まぁ? 人間がどうしてもって言うならアタシの事を褒めても良いけど?」
「なら我がやる!」
「だからアタシの番だって!」
「私も混ぜろ」
いつの間にかフリーズから戻ってきていたマインも加わって、なぜかヴィータからの「褒め」を巡るボス戦の取り合いが始まってしまった。
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