056:魔王パーティへようこそ!①


「あら、おかえりなさい」


 冒険者登録の手続きを終えて、ヴィータとオトワは魔王城へと帰って来た。


 箒を持った姿のメイドのエノンに迎えられ、オトワが元気いっぱいに報告する。


「ダーリンは見事、SSSランク冒険者になれた! ついでにパーティ加入の手続きもしてきたぞ! これで正式に我らの仲間入りだ!」


「あら、おめでとう。人間にしてはやるわね。ま、オトワが気に入るくらいだし、アタシたちのパーティに加わるならそれくらいしてくれないと困るんだけどね!」


 オトワがエノンに見せつけるように取り出したんはヴィータのギルドカードだ。


 冒険者登録の証は1枚の手のひらサイズのカードだった。

 人間界と同じ形のギルドカードである。


 そこにはオトワが記入したヴィータの情報と、登録試験の結果が記載知れている。

 中央には大きく「SSSランク」と乗っていた。


「って、人間……どうしたのよ、その恰好?」


「あぁ、登録試験でちょっとな……」


 チュチュの事をなんと説明しようかとオトワを見る。

 ヴィータからすればほとんど通り魔のような少女だった。


「少しチュチュの遊び相手をしてもらったんだ!」


「あぁ、あの子ね。サンダーバードなんて、将来が楽しみよね……って、え? アンタ、もしかしてあの子の雷をまともにうけたの?」


 どうやらチュチュの事はエノンも知っているらしい。

 もしかしたらこの城のメンバーは全員知ってそうだな、なんてヴィータは予感した。


 あの猪突猛進ガールなら、相手が誰だろうと決闘を挑みまくってそうだしな……なんて失礼なことを、正気を疑うようなエノンの視線を受けながら考えた。


「まぁ、余裕だったけどな?」


 オトワの前なので未だに強がり続けているヴィータだったが、エノンにはバレていた。

 ぶっちゃけまだ痛いのである。


 エノンは元魔王であるが、今は実は人間の骨を核としたスケルトンであり、オトワと違って人体の仕組みや作りを熟知していた。

 だからヴィータがやせ我慢している事など、筋肉や関節の動きのわずかな違いから簡単に見抜けるのである。


「せっかく掃除したばかりなんだから、とりあえずそのボロボロの服を着替えなさい」


「そうだな」


「あー、そうね。夕食の準備がまだだから、ついでだからシャワーでも浴びたらどう? 浴場の用意は先に出来てるし」


「おぉ、それは良いな! だったら我も入るぞ!」


「あら、そう? じゃあオトワ、ついでに人間を案内してあげてもらえる?」


「おう、任せろ! よーし、さぁ行こう! ダーリン♡」


 そしてヴィータは大きな食堂を抜けて、廊下を進み、城の奥へとオトワに手を引かれて行く。


 そして巨大な大浴場に案内されて来た。


 こういう時のヴィータの基準は超大国ズァナルのアナヴィ王城になるのだが、大浴場には入ったことがないため比較できない。

 勇者たちはたまに招かれていたが、落選者の扱いはひどかったのだ。


 だが、そんなヴィータにも目の前の風呂がとにかくデカい事はわかった。

 ヴィータの住んでいた家にも風呂はあったし、現代の人類の基準で言えば風呂があるだけでも十分に「贅沢」な家だったと言える。

 だが、それでもしょせんは1人用の小さな風呂場でしかなかった。


 それに対して、この城の大浴場は大の大人が10人いても余るくらいには広い。

 そしてシャワーもデカい。というかなんか位置が高いのだ。


 と、その想像以上の豪華さに感心していると、目の前でオトワがバーンと堂々たる振る舞いで服を脱いだ。


「!?!?!?!?」


 そう、ヴィータはオトワと共に大浴場に来たのだ。

 まさかの混浴なのである。


 そもそもこれまではオトワ、マイン、エノンの3人しかいなかったのだ。

 この城には男用の浴場なんてものが存在しないのである。


 そしてオトワは相変わらず熱烈なアプローチでヴィータに抱き着いてきて……


「ほら、ダーリンも脱いだ脱いだ♡」


「えっ、ちょ、アッー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る