055:魔界的、登録テスト延長戦④
(これは、なんだ……!?)
バヂヂヂヂヂヂヂヂヂッッッッッッ!!!!
チュチュの放った雷鳴と共に、訓練場は幾重にも張り巡らされた電撃の網に囲まれた。
それぞれが雷を流しあい、その流れに乗ってさらにチュチュが加速していく。
それぞれの線は激流のように激しく力を流し、チュチュのための加速装置としての機能を持っているのだ。
強烈な光と熱と音。
まるでチュチュのために作られた雷撃の結界である。
そんな雷のフィールドでチュチュが速度が増して行くにつれ、さすがのヴィータも目で追うのがきつくなってきた。
このままでは悠長に受けてはいられない。
そうして生まれたヴィータの小さな隙を、チュチュは逃さなかった。
(死ねや人間ッッッッッッ!!)
殺意を全開に、今のチュチュが出せる全力を持ってヴィータへと突っ込んだ。
これまでチュチュの生きる道に現れる全ての困難を打ち砕いてきた、彼女の最強の必殺技。
その名を……
「
「
バオッッッッッッ!!!!!!
振り抜かない、そこに置くだけの【龍閃拳】。
拳圧による風がチュチュの髪をフワリと舞い上がらせた。
「…………ッ!!??」
目では負えない速度でも、やはりチュチュの攻撃は直線的なモノに過ぎなかった。
そしてチュチュ本人がランダムに移動しているつもりでも、その動きには規則性が残っていた。
ヴィータはそのほんのわずかな規則性を見抜き、そしてあえて隙を見せた。
そしてチュチュが技を放とうと力む瞬間、ヴィータは急接近して止めを差した。
体ではなく、心に。
振り抜かない、チュチュの目の前に、ただそこに置くだけの【龍閃拳】がそれである。
それによりチュチュは最大の必殺技を放つ直前、その動きを止めざるを得なかった。
チュチュが止まらなければ、ヴィータの拳がチュチュの首から上を吹き飛ばしていただろう。
もちろんヴィータはそうなる前に頬にかすり傷が付く程度には拳の位置を逸らすつもりだったのだが。
結局、チュチュはヴィータの策略に乗せられて誘い込まれたのである。
そして自ら戦闘を止めた。
それが勝敗だった。
決闘の決着はついた。
「勝負あり、だな」
「…………ッ!!」
何も言い返せず、チュチュはペタンとその場にへたりこんだ。
バチバチと鳴り続けていた雷鳴は消え、訓練場に静寂が戻る。
「チュチュ、これで納得したか?」
オトワがやってきてそう確認すると、チュチュは涙目になりながら悩んだ末に「う゛ん゛」と心底悔しそうに頷いた。
「そうか、良かった! ダーリン、チュチュはどうだった? 強かっただろ?」
「あぁ、強かったよ。気を抜いたらやられてた」
もちろん本心である。
結果的には「お互いに無傷」というSSSランクとしての威厳を示せた。
だが、ヴィータはオトワに良い所を見せるため「一歩も動かずに勝つ」くらいのつもりでいたのだ。
それがそんな余裕はなくなり、最終的には自ら動いて決着を急ぐことになった。
そうしなければ、最後のチュチュの技が更に加速し、完璧に発動していたなら……勝敗がどうなっていたかはヴィータにも分からないのだ。
「う゛ぅ゛~~~~!! 負けた゛~~~!! 人間のなんかに゛~~~!!」
それを聞いて気が抜けたのか、チュチュは幼い容姿に似つかわしい子供のように大泣きを始めてしまう。
「おっと、よしよし。チュチュは強いし、それに毛並みも最高なんだぞ」
「スリスリすな゛~~~!!」
「へぇ~……」
「お、お間まで、ななな撫でようとすな!! に、人間のクセに゛~~~!!」
「あ、すまない。つい可愛くて……」
「~~っ!!??」
チュチュは予想外の言葉にボッと顔を真っ赤にして……
「~~~~ッ!! つ、次は殺す~~ッ!! 覚えときや~~~~~~ッッ!!!!」
と、いかにもな捨て台詞を残して走り去っていった。
「うん! 良かった! ダーリンもチュチュと仲良くなれたみたいだな!」
そうか?
と首を傾げつつ、ヴィータはオトワと共にチュチュの姿を見送るのだった。
(毛並みに……気になる……)
なんて思いながら。
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