054:魔界的、登録テスト延長戦③
「す、少しはやるようやなぁ~、人間ッ!! そうでないと決闘が盛り上がらんもんなぁッ!!」
(なんやねんこの化け物は~~~!? 人間ってもっと貧弱な生物とちゃうん!? みんなこんな化け物なん!? この後どうする!? パンチも雷も効かん……いや、まだ防がれたのは正面からの攻撃だけや! 次はもっとスピードで翻弄して……!!)
「フッ……お前こそ、少しはやるじゃないか。楽しませてくれよ……!!」
(雷いってぇ~~~!? つかどういう仕組みで雷でてんの!? もうやだ、避けたい! でも避けたらオトワに「ダーリン、これくらいで痛がってるのか?」とか思われないか!? 少なくともオトワの中では俺の方がチュチュより格上になってるっぽいし、SSSランクらしく余裕で勝った方が良いんだよな!? どうする!? 早めに決着をつけるか!? でもチュチュってオトワと仲良さそうだしあんまりケガさせたくはないしなぁ……軽めの攻撃で、いや寸止めで実力の差を見せつけて……!!)
ヴィータとチュチュのカンチガイが交錯する中、戦いが再び動き出す。
「ほざけッッッ!!」
「フッ……いつでも来い」
(真正面からバカ正直に攻めるのは止めや! こいつはそんなヌルい戦いで勝てる相手とちゃう!!)
(さっきよりも姿勢が前のめりになってる。威力も上がるハズ……受け止めても絶対に痛いぞ! 次は受け止めない! 受け流す!!)
チュチュは一度、距離を取って再び腰を低く落とした。
最初の一撃よりも前傾姿勢で、強い衝撃が予測されるそのチュチュの姿に、ヴィータは秘かに備える。
そしてチュチュの姿が、弾かれたように飛び出す。
真正面への突進ではない、わずかにヴィータから逸れた軌道だ。
そしてチュチュが通り過ぎて行った先でバァン! と、先ほどよりは小さく雷鳴がなる。
同時、チュチュが爆発的な速度のままで進路を変える。
雷による空気の膨張による衝撃を利用して、チュチュは急激な方向転換と加速を両立していた。
バァン! バァン!! と雷鳴が続く。
チュチュの体にまとわれた電流が残光で線を引き、その姿はさながら稲妻の如く光った。
「そうきたか……!」
正直な正面からの攻撃ではない。
攪乱と助走が目的の動きだ。
だが動きが直線的である事には変わりなく、やろうと思えば動線に割り込んで止める事も出来る。
が、かっこよく余裕で勝ちたいヴィータにはそれが出来ない。
あくまでもチュチュの全力を受けて立つ姿勢を崩さない。
(チィ……!! 人間、目ぇ良すぎるやろがッッ……!!)
一方でチュチュは攻めあぐねていた。
雷を使った方向転換はチュチュの得意技でもあるのだが、やりすぎると雷を無駄に消費する事になる。
だからこそすぐにでも攻撃に転じたいのだが、方向転換の度に、ヴィータはしっかりとチュチュの姿を捕らえていた。
全身ではなく、首や肩を動かす程度の動きだが、ヴィータのその視線だけはチュチュを完璧に捉え続けている。
今、焦って攻めても間違いなく対応してくるとチュチュは確信せざるを得なかった。
ヴィータの死角を作り出すのには、今のチュチュには圧倒的に速度が足りないのである。
「チュチュ! 生半可なスピードはダーリンには通用しないぞ!」
と、そんな様子を見ていたオトワはアドバイスを飛ばしだした。
(どっちの味方なんだか)
と、自分でもまだ理解していない嫉妬の感情が芽生えかけるヴィータだが……
オトワはそんなヴィータの視線に気が付くと、パチリとウインクを投げかけて返した。
(……っ!! なるほどな……!!)
ヴィータはそれを「信頼」と受け取った!!
そしてチュチュもオトワの声援を「期待」を受け取っていた!!
どちらもスタンスを崩さないまま、だが負ける事だけは出来ない覚悟である。
チュチュはさらに前傾姿勢に変わり、速度を増す。
「ウチの
そんな宣言と共に、巨大な雷鳴が響く。
バァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンンッッッッ!!
その雷鳴はチュチュの体そのものから響いていた。
同時、これまで方向転換の起点として使われた雷鳴の残滓が、そこに残された魔力が共鳴するように光を放ち始める。
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