048:魔界的、登録テスト①
「4つのテストではそれぞれ身体能力、魔力、技術力、知力を調べる事になっているぞ!」
「なるほど!」
人間の冒険者ギルドでは魔法剣の属性と攻撃力のテストという2つだけだったっけ。
なんて、ヴィータは過去の登録テストを思い出していた。
魔法剣に選ばれなかった落選者のヴィータはどの属性への適性も持っておらず、どの属性へのどれくらいの適性があるのかを調べる魔道具は全くの無反応だった。
そして過去最低の0属性、適正度0点という驚異的な記録を打ち立てたのである。
本来ならばその一次試験の時点で不合格になる成績なのだが、その次の攻撃力テストで絶対に壊れないハズの人型ターゲットを粉々に粉砕し、そっちでも「測定不能」という驚異的な記録を打ち立てた事で特別に合格できたのである。
その記録は人間界ではどちらも未だに更新されていない。
「まずは第一の試験! 身体能力のテストだ! これは物理的な攻撃力の高さを調べるテストだ! というわけで……」
オトワはバーンと両手を広げ白いおヘソをあらわにする。
「さぁ、ダーリン♡ 我にパンチを放つが良い♡ その威力、我が身をもって測定してやるぞ♡」
「いやいやいやいや!? それ絶対に嘘だろ!?」
「くっ、バレたか……! でも、さすがはダーリン♡ 我のことはなんでもお見通しってことだな♡」
どう見ても測定用の魔道具らしきものがあたりに散らばっている。
あとハートが多すぎる。
誰でも分かるくらい分かりやすい嘘だった。
「でも、もうパンチしてくれないのか?」
「うっ……」
そんなウルウルと潤んだ瞳で上目遣いをされるとヴィータは弱い。
ヴィータはチョロいのだ。
「こ、心の準備をさせてくれ……」
さすがに意中の相手を、しかも女の子を殴る気持ちにはなれない。
これまで容赦なくブン殴れたのは、オトワを魔王であり敵だと認識していたからだ。
だが今のヴィータの目に映るオトワは愛らしい女の子でしかなく、ぶっちゃけ大好きなのである。
「なるほど、焦らしプレイというヤツか……♡ うん、悪くないぞ……♡」
「お、おう……?」
良く分からないがひとまず納得してくれたらしいのでヴィータは安堵した。
変な空気になる前に話を戻す。
「それで、本当のテストは?」
「んーと、まずはこれだったな。この測定器だ」
オトワが拾い上げた小さな人形をギュっと握ってから頬り投げた。
空中で人間サイズに巨大化した人形が2本の足でしっかりと地面に立つ。
「これは魔力によって衝撃を吸収する能力を持った魔道具だ。そして吸収した衝撃を数値化する機能もある」
人間界で受けた攻撃力テストに近い内容だ。
どんな魔法剣でも絶対に壊れないターゲットに形も似ている。
それは一発で壊れたのだが。
「手でも足でも尻尾でも、方法は自由! 絶対に壊れないから手加減も無用! 何でも良いからこの測定器に物理ダメージを与えて規定値を超えたら合格だ! ま、ダーリンのパンチの威力なら我と同じSSSランクだと思うけどな!!」
人間の冒険者ギルドには冒険者ランクが存在する。
それは最下級のFランクから最上級はSSSランクまであり、それぞれのランクには危険度の目安となるモンスターの名前があてがわれていた。
Fランクならスライム級、Eランクがゴブリン級など、そのランクの冒険者が倒せるくらいのモンスターの名前が付いているのだ。
SSランクとSSSランクは規格外なので目安となるモンスターがいないためモンスター名はつけられていないが、SSSランクは実質的には魔王クラスと言われている。
それは魔界の冒険者ギルドでも同じだった。
むしろ、実はそれは魔界生まれのシステムの名残なのである。
遥か昔に魔族たちが種族間で力を競い合い、ランクシステムが生まれた。
だがそのランクは常に変動してしまい分かり難いためA~SSSという記号に置き換わる事になったのである。
「そういえば、マインに聞いたんだが……スライムが最低のFランクなんて、人間は古いシステムのままみたいだな! 現在の魔界の冒険者ランクではスライムが最高ランクなんだぞ! なにせ我が最強魔王だからな!! わっはっはっは!! SSSランクはスライム級だ!!」
「マジか。良く分からないけど、なんかすごいな……」
ヴィータはその事情を知らないため適当に相槌をうったのだが、実際、一部の地域とは言え一人で魔界の勢力図を塗り替えるなんて本物のバケモノの所業である。
「ちなみに現在の最低ランクはドラゴンだぞ!」
「何があったんだよ、ドラゴンに……」
人間界ではSランクの凶悪なモンスターとして認識されているドラゴンである。
いたいどれほどの不幸が起これば最弱のFランクなんて扱いにされてしまうのだろうか。
初めてモンスターに同情したヴィータだった。
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