ヴィータのパンチ気持ちよすぎだろ!~S級勇者パーティから追放されたハズレスキルの拳聖が実は最強だった件。SSS級魔王パーティに誘われたので楽しく暮らします。人類は滅亡するけど今更謝ってももう遅いです~
番外編02:ヴィータのパンチ気持ちよすぎだろ② ~魔王サイド~
番外編02:ヴィータのパンチ気持ちよすぎだろ② ~魔王サイド~
「なぁエノン! ヴィータって何者なんだ!?」
「いや知らないわよ!? ヴィータって誰よ!?」
飛び起きたオトワは眼をキラキラさせて側にいたメイド、エノンに詰め寄った。
もちろんヴィータの事など知っているわけがないのだが。
「人間だ!!」
「はぁ!? 何よ、オトワ。アンタ、人間相手に手こずってたワケ?」
「いやただの人間じゃないぞ、エノン! ヴィータはなんだかすごい人間だ!」
「ふーん? ま、どうでも良いけど。っていうか、そろそろ分身体を戻したら? 次のダンジョン攻める前にメインで慣らしといた方が良いんじゃないの?」
「そうだな! だが分身体はやられた!」
「はぁ~~~!?!? アンタがやられるって何それ!? そいつ本当に人間!? バケモンじゃない!?」
「バケモンかもな! すごい攻撃だった! 体の奥がジーンと痺れたんだ! 初めての感覚だった!! あれはクセになるぞ!!」
「え、アンタそっちの趣味あったの……?」
若干引き気味のエノンを気にもかけず、オトワはヴィータのすごさを一方的に語り始める。
「人間なのにパンチがすごいんだ! 素手だったぞ!」
「目も良い! 我のコアを瞬時に見抜くなんてな!」
「なんかもう全部カッコいい気がしてきた!!」
オトワのヴィータ語りはその後も続き、食事中も、お風呂でも、ベッドの中でも延々とエノンはそれに付き合うハメになった。
「あ~、もう! いつまで続くのよこの話!? ヴィータって誰よぉ!? あーん! 助けて、マインお姉さま!!」
そしてエノンはついに城の地下にある書斎へと助けを求めた。
誇りっぽい地下の書斎で1人、テーブルで熱心に本を読んでいた少女が顔を上げる。
月のように青白く光るランプに照らされた少女は、オデコに貼られた短冊のような札をペラリとめくりあげ、オトワをジッと観察する。
「ん……? なんだマイン、我の顔になにかついているか?」
「大賢者は何でも知っている。オトワよ、それは……恋だ」
「こ、こ、恋ーーーーっ!?!?」
「……恋って、なんだ?」
「アンタそれくらいも知らないの!? 恋ってのはね……なんですかマインお姉さま!?」
二人はとてもピュアだった。
「大賢者は何でも知っている。恋とは、特定の者を愛することだ」
「愛する事?」
「なんだか素敵な響きじゃない! オトワ、アンタ愛を知ったのね!!」
「なるほど、そうらしいな! エノン、我は愛を知ったぞ!」
良く分からないがヴィータの事を考えるのはとても楽しかった。
それが愛なら、その愛と言うモノを大切にしたいと思った。
「大賢者は何でも知っている。本来、スライムに特定の性別はない。分裂して数を増やすか、または相手に合わせて変化するからだ。そしてオトワ、君は人間の男に恋をした。人間の男を愛した。だから姿が人間の女に変化している。君はその男に出会った事で初めて女のスライムになったというワケだ」
「む? そうなのか?」
「あ、確かに! アンタいつ間にか私よりおっぱいあるじゃない!?」
「いやエノンには最初から余分な脂肪なんてないだろ。スケルトンだぞ?」
「誰が洗濯板よ!? あるわよ、私にも!! 女の子はみんな心におっぱいを抱いてるの!! 澄んだ心の眼で見なさいよ!!」
ピーピーと喚いて抗議するエノンだが、確かによく見ればなんだかオトワのボディが変化していた。
出るところは出て、へこむところはへこんでいる。
目は大きく、瞳はキラキラと煌めいて、睫毛も長くカールしていて……より人間の女に近い形状になっているのだ。
それも理想の女の姿に。
「それで、愛ってなんなんだ?」
恋とは愛らしい。
ではその愛とは?
オトワにはそれが良く分からない。
「ふむ。大賢者は何でも知っている。愛とはつまり……」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
「あ、マインのやつフリーズしてるな」
「お姉さま!? こんな時にゾンビ化の悪影響がぁ!?」
恋とは愛らしい。
その愛は良く分からない。
ただ、なんとなく直感があった。
この感情はヴィータとの出会いから始まった。
だったら、もう一度会ってみれば良い。
そうすれば、この気持ちはきっともっと楽しくなる。
そう確信して、オトワは胸を躍らせた。
「待っていろ、ヴィータ。今、会いに行くぞ!」
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