024:バカなの人類?①


「なんでだ!? ダーリンが追放されるなんておかしいだろ常識的に考えて!?!?」


 ヴィータが国外追放までの経緯を説明すると、全てを聞いたうえで「意味が分らん!」とオトワが眉間にシワを寄せた。


「どういうことなんだ!? なんでわざわざ自分たちの最高戦力を捨てようとするのだ!? 愚かすぎないか、人間!?」


 勇者パーティのメンバー達も、王国騎士団の騎士達も、誰もヴィータの声に耳を傾けてはくれなかった。

 だがオトワは違う。


 真剣な表情で追放までのヴィータの経緯を聞いて、そしてヴィータのために本気で怒ってくれた。


(本当に、不思議なヤツだな……)


 オトワはスライムというモンスターで、そして魔王に認定されるほどの危険度をもつハズなのに、どこまでもヴィータの味方でいてくれる。

 ヴィータはオトワが自分の代わりに怒ってくれるだけで、少し心が軽くなるような気がした。


「というか、我のダーリンを役立たずの落ちこぼれ扱いするなんて許せん!!!!」


「いや、そこまでは言われてないけどな?」


 似たような扱いではあったのだが、悲しくなるので一応が否定をしておく。

 そもそもオトワの所有物になったつもりもないのだが。


「人間、滅ぼすか?」


「やめなさい」


 ヴィータは冗談だとは思いつつも、オトワがその気になれば本当に滅ぼせそうだから怖かった。


(…………いや、冗談だよな?)


 モンスターの思考回路には馴染みがないためだんだん不安になってくる。


 ヴィータがオトワと初めて出会った魔王城での戦いではオトワは全く本気ではなかったらしい。

 あの時に出会ったオトワは分身体の中でも偵察用としてかなり戦闘能力が低い状態の姿だったようだ。


 勇者クリムをリーダーとして魔王城に攻め入ったヴィータたち勇者パーティにとっては「歴史に名を残す世紀の大決戦」だったハズの魔王クイーンスライムとの戦いは、その一方で魔王であるオトワにとっては何でもない良くある人間からの襲撃の1つに過ぎなかったのだ。


 そこでヴィータと出会った事を除いては。


「まぁ、冗談はさておき……」


 良かった、冗談だった。

 本人の口からその言葉が聞けて、ヴィータはホッと胸をなでおろした。


 これまでのヴィータにとってモンスターは敵でしかなく、そんなモンスターが人間と同じように冗談を言うなんて姿は想像したことがなかった。


 だが戦うわけではないゆったりとした時間を一緒に過ごしてみると、まるで人間と変わらない事に気づかされる。

 むしろ落選者として虐げられてきたヴィータにとっては人間よりもオトワに温かみを感じるほどだった。


「しかしその勇者とやらは本当に無能なのだな。全く呆れる。こんなにすごいダーリンの価値がなんで理解できないんだ? ダーリンに勝てる人間なんていないだろう? ここまでくると、その顔が見てみたいもんだ。とんでもないマヌケ面に違いないぞ?」


 腕を組んでプンスコと怒りながら勇者の姿を想像しているらしいオトワ。

 ヴィータは組んだ腕に乗っかり強調される部位に視線が行きそうになるが、ギリギリの紳士力で耐えた。


 それから違和感に気づく。


「いや、前に一度オトワとも戦ってるはずだけが……覚えてないのか?」


「んむ?」


「ほら、俺と初めて戦った時だ。俺と一緒に戦った仲間がいただろう? あれが勇者パーティだよ」


「あれが勇者パーティ……? あぁ~、ダーリンと一緒にいたあのヘナチョコ人間どもか!」


 思い出したらしくオトワはポン、と軽快に手を打った。

 それにしても勇者たち、ひどい言われようである。


 人間界の中では最強のSランクパーティと呼ばれ、国民からも賞賛を浴び続けていたのだが……そんな事はSSSランクのオトワにとってまるで興味がない事なのだった。

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