008:魔王との再会①

「お前は……魔王!?」


 歴代魔王の中でも最強クラスの生命力と再生能力、そしてあらゆる攻撃に対する無敵に近い耐性をもった突然変異のスライムの女王……6代目魔王クイーンスライム。

 勇者パーティが戦った中でも間違いなく最強のモンスターだった存在。

 Sランクを越え、唯一SSSランクに指定された世界で最も危険な存在。


 それがいきなりヴィータの目の前に現れた。


「いや、そんなハズはない……あの魔王は俺たちが倒したハズだ!」


 そのハズだった。

 魔王であるクイーンスライムは勇者パーティによって討伐されたのである。


 一か月ほど前の事だ。

 ヴィータはクリムたちと共に魔界へと冒険に出て、その最奥の魔王城でこのクイーンスライムと激闘を繰り広げた。


 勇者パーティの全力攻撃、そして最後にはヴィータの拳がスライムの急所であるコアへと到達し、無限に繰り返されるとも思われた魔王の再生は停止、勇者パーティは魔王を倒す事ができた。


 それから魔王討伐の証拠としてヴィータが砕いたスライムコアを持ち帰り、鑑定結果が間違いないとわかると、それからと王国では何日も祝祭が続いた。

 そんなお祝いムードが落ち着いたのがつい先日の事だった。

 

 そしてそれはヴィータにとって、自分が追放された理由の一つでもあると考えていた。


 魔法剣でも倒せないスライムの魔王が現れたという噂が王国に広まった時期と、魔法剣を使わずに戦う異端の少年ヴィータが勇者パーティに誘われた時期は一致していた。

 あらゆる攻撃の中でも魔法剣に対して特に強い耐性を持つという、まるで人類の天敵のような存在の出現により、本来なら落選者などに頼りたくないハズの王国すらもなりふり構っていられなくなったのだろう。


 主な攻撃手段が魔法剣ばかりに人類における、対魔王のための特殊な攻撃手段。

 それが自分の役割なのだとヴィータは薄々だが感づいていたのだ。


 だから魔王討伐により、ヴィータは自分に期待されていた役目を終えたのだと感じていた。


 それでも世界から全てのモンスターがいなくなったワケではない。

 ヴィータのこれまでの功績が消えてしまったワケでもない。


 これからも勇者パーティの一員として戦いが続くと思っていたのだが、まさかこんなにもあっけなく追放されるとは思っていなかった……。


「お前って……ひどいじゃないか、ヴィータ。我の名はオトワだ。名前くらい覚えてくれても良いだろう、ヴィータ♡」


 オトワと名乗った魔王はその身体をヌルリと変化させ、滑り込むようにして一瞬でヴィータの目の前まで移動してきた。


 ヴィータの胸板にオトワの柔らかなボディがペタリと触れる。

 熱い日差しが降り注ぐ灼熱の世界の中で、ひんやりとしたその体が心地よい。


 半透明だったさきほどからさらに変化し、その見た目は人間と変わらないモノになっている。

 むしろ人間以上の美貌である。


 ふわりとカールさせたサファイアのように美しく透き通る髪に、精巧な人形のように小さな顔。

 スライムと思えないほど白く美しい四肢と、何より豊満でやわらかな胸部。


 人間そっくりの大きな瞳がウルウルと潤み、上目づかいでヴィータを熱っぽく見つめてくる。


 初めての感覚に心臓が強く跳ねた。

 冷たいハズの体に熱を感じる。


(なんだ、この感覚は……!? この胸の高鳴りは……!?)


 モンスターが意味もなく人間に触れるわけもない。

 まさか、毒か!?


「くっ……!?」


 油断した!?


 ヴィータに動揺が走る。


 珍しくも思わず感傷に浸ってしまったヴィータの隙をついたとは言え、驚異的なスピードだ。

 ヴィータの体に触れる距離まで接近できるモンスターなど、神速の異名を持つ精霊サラマンダーですら不可能だった。

 接近してくる相手は精霊だろうと全て殴り倒されてきたのである。


 このスライム、サラマンダーよりもずっと速い。


 だが魔王とは人類を滅ぼさんとするモンスターの親玉である。

 強くて当然の存在だ。


 一度は倒したハズのそんな魔王が、どういうわけか蘇ったらしい。


(分からない事を考えても仕方がない!!)


 ヴィータは脳ミソ筋肉系の勇者である。

 余計な事は考えるのを止め、ただ自分の使命のままに動いた。


 やるべきことは最初から1つしかないのだから。

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