003:そして反逆者に仕立て上げられる①


「さて、新しいパーティを探さないとな」


 勇者パーティを追放された次の日、自分の宿でヴィータは迷っていた。

 今、ヴィータには選択肢が2つある。


 1つ目は今まで通りこの町の冒険者ギルドに向かう事。

 2つ目は隣町のギルドまで行っちゃう事。


「楽なのはもちろん、通いなれたこの町のギルドなんだけどな……」


 だが冒険者としてギルドから仕事を受けるのはヴィータも勇者パーティも同じことだ。

 いつも通りにこの町のギルドに行けば、あのクリムたちと鉢合わせになる可能性は極めて高いのである。


「……会いたくないな」


 あんな追放をされて、とてもではないがクリムたちを再会したいとは思わない。

 というか絶対に会いたくない。


 ヴィータは他の冒険者たちの視線もあったからその場では冷静な振りをしたが、実は泣きそうなくらいショックだったのである。


 落選者とはそれだけでバカにされ、差別をされるような存在だ。

 その烙印を跳ね返すような勇者という称号、それはヴィータにとって大きな誇りだった。


 勇者パーティから追放された時、ヴィータはその誇りを踏みにじられたような気がした。

 それが何よりもショックだったのだ。


 最後に見たクリムの意地の悪い笑みが思い出される。


 ヴィータはパーティのために尽くしていたハズなのに、最後には嫌われていた。

 再び出会ってしまえば、次にどんな嫌味を言われるかわかったものではない。


 ギルドには顔見知りの看板娘や受付嬢たちがいる。

 彼女たちに話をすれば新しいパーティ探しもスムーズに進むだろうが、今のクリムたちの存在はそれ以上に大きかった。


「それに余計なトラブルはギルドにも迷惑をかけるからな……」


 最後にはその看板娘たちの事を考えて隣町へ向かう事を選んだヴィータだった。


「おっと、そういえば追放ついでにサイフも取られたんだったか」


 善は急げと、さっそく出かけようと思ったがサイフがない。

 サイフもなければ今は手持ちの金もない。


「そうか、まずは倉庫に寄らないとだな」


 預けてある金をおろし、気分転換に少し豪華な朝食でも食べるとしよう。


 普段から節約してきたから蓄えはある。

 こんな時くらい少し奮発しても許されるだろう。


 そう考えて立ち上がると、外から何やら騒がしい声が聞こえてきた。


 ヴィータが部屋の外へ出ると、そこには白い甲冑に身を包んだ大柄な騎士たちが立ちふさがっている。

 甲冑の胸のあたりには大きな剣の模様が十字架のように刻まれている。


 王国騎士団キングスブレイド。

 その紋章は騎士たちが国王直属のエリート騎士であるという証である。


「なんだ!? こんな所に王国騎士団が!?」


「王の剣が何しに来たんだ!? 誰かヤバい事したのか!?」


 通りかかる人々が騎士たちの姿にざわつくが、騎士たちは気にする様子もなくヴィータに近寄ってくる。

 わざとガシャガシャと音を立て、まるで威圧するかのようだ。


「えーと、何か用か?」


 状況が分からずに聞いてみると、騎士たちはただ一言で答えた。


「反逆者ヴィータ、お前を国外追放とする」

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