十五話 文化祭案決め
二人が帰ってくきたのはあれからすぐのことだった。
二人が話しながら教室へと入ってくる。紬はすぐに僕がいることに気がついたようで、瑞樹と話しているにも関わらずこちらに走ってくる。
「あー蒼くんだ!! 体調もう大丈夫なの! 急に倒れちゃってすごいびっくりしたんだからね!」
「あはは、ごめんねこれからはしっかり気をつけるよ。心配かけてごめんね」
「私はまだ大丈夫だったんだけど、瑞樹ちゃんが蒼くんのことすごく心配して挙動不審気味になっちゃってたりして大変だったんだからね。......って痛い!?」
教室を走ってきた紬とは違って歩いてきた瑞樹は、変なことを口走る紬の頭へと拳を振り下ろす。
その強烈な一撃は紬が悶絶するのには十分だったようで、頭も抱えてうずくまっている。
その様子を見るにものすごく痛そうだ。
「あまり変なこと言わないでくれるかな紬。蒼くんはもう大丈夫そうね、よかったわ。もうわかっているようだけどあまり心配かけるようなことはしないでね。」
「うん、ごめんね。紬にも言ったけどこれからしっかり気をつけるよ」
「あなたが倒れて心配する人はもう少なくないのよ。あなただけの体ではないのだからちゃんと自分を気遣ってね」
「ありがとう、瑞樹」
「どういたしまして」
「仲良く話してるとこ申し訳ないんだけどもう座っといた方がいいぞ。柊木先生も来たし」
椅子を斜めに浮かせながら誠が話しかけてくる。
誠が言っていたように教室の前を見てみると柊木先生が入ってきていた。
時計の針ももうすぐ授業の開始時間を指すところだった。
「そうね。もう座りましょうか紬」
「うん!誠くん、蒼くん、次は文化祭のやること決めだから楽しみだね!」
「そうだね、みんなで楽しめるようなものを考えようか」
「そーだな、俺もやりたいことあるんだよ」
誠は少し悪そうな顔をしているがその表情が何を考えているかはわからなかった。
そうしていると授業開始のチャイムがなった。
「おーし、号令頼むわ」
「起立 礼」
先生の号令で授業が始まった。
「よし、これから文化祭でやるもん決めるぞー、ってことで詳しいことは委員長頼むわ」
柊木先生は当然の如く生徒に全部投げ出し、ダルそうに椅子に座っている。
「おい、蒼あの人全部委員長に投げ出したぞ。あの人なんで教師やれてんだ」
「あはは、あれでも結構優秀な人なんじゃない?.......多分」
柊木先生に委員長と呼ばれた人が男女一人ずつ前に立つ。
教卓の前に立ち男の人が喋り出す。
「えっとじゃあ、意見を出して欲しいんですけど、急に言われてもそんなに出ないと思うので、周りの人や班の人と話し合って案を出してください。時間はそうだな、10分くらい取るのでそれまで話してください。」
委員長の言葉を聞き、僕たちは体の向きを変えて話しを始める。
「朝も同じようなこと聞いたけど、みんなは何かやりたいものないの?」
僕の問いかけに3人は少し考え込んでしまう。
僕も任せきりではいけないと思い何か案を出そうと考えるが、あまりいい案は浮かんでこない。
「うーん、このまま考えていてもあまり進まなさそうだし、できそうなものたくさん言ってみようか。メモはするよ」
「おーそうしようぜ、質より量ってことだ。たくさん出たもんの中で絞っていくか」
「それじゃ私はたこ焼きが食べたい!」
「たこ焼きかいいなそれ。個人でたこ焼き器持ってるやつから借りて作れば、必要なのは食材とかだけでかなりやりやすそうだな」
「なるほど屋台系か、確かにやりやすそうではあるね。瑞樹は何かやりたいことある?」
「私は、そうね。朝も言ったけどお化け屋敷とかかな」
「お化け屋敷か、教室のものを使って色々できそうだね」
みんながそれぞれ意見を出し始めた時、ふとあることを思い出した。
「そういえば誠」
「ん?」
「さっき何かやりたいことあるって言ってなかったっけ?」
「あぁそれな、うん。...ここじゃちょっとだな」
「どうしたんだい? いいから話してみてよ誠の案がものすごくいいものかもしれないんだし」
「うっ、そうか。俺は、 ...がしたい」
「えっとごめんもう一度行ってくるかな?うまく聞き取れなくて」
「俺は、メイド喫茶がしたい!!」
「......え?」
メイド喫茶?誠はそう言ったのか。
一瞬理解が追いつかなかった。
まぁでも、誠がやりたそうなものではある...のか?
「なんだよ! その顔は!」
「いや、だって、うん」
「おいおい! 理解できないってのか!? メイド喫茶は男の夢だろ!」
「う、うん? まぁその百歩譲ってメイド喫茶の案が通ったとして、メイドの衣装とかはどうするんだい? それこそ予算が降りるかわからないよ」
「蒼! お前はどうして俺の時だけそう過酷な現実を突きつけてくるんだ!」
「いやだってそんなもの現実的じゃないし、何より得するのが男達だけじゃないか」
「っぐ。お、お前だってみたいはずだ、小鳥遊さんや紬のメイド姿を!!」
「誠!? 本人がいる前でよくそんなことが言えるな!」
「そんなことはどうでもいいんだ!」
誠の迫真すぎるその表情に少し気圧されてしまう。
これは、本気だな。
「どうでもよくないよ!」
「どうなんだ蒼!」
「そうだよ! どうなの蒼くん!」
「紬!? 君までそっちなの!?」
「蒼くんは、瑞樹ちゃんのメイドさん姿が見たくないの!!」
どうして、どうして急に紬は誠の悪ノリに乗っかってくるんだ!
余計にこの場を納めるのが難しくなってしまった。
「「どうなの!」」
「......見たくないわけじゃ、、ないけど」
「「おぉ!!」」
「おぉ!! じゃない! この話はもう終わり! 誠は違うのちゃんと考えて!」
「えーダメなのかよ。じゃあ蒼はなんかやりたいものあるのかよ」
「え、僕?」
「おう」
「うーんと、えっと、、 あ! ここは一周回って演劇とか!」
「「「却下」」」
「はい。」
その瞬間、先ほどまでふざけていた二人や、その話題に対して我関せずの態度を示していた瑞樹さえも声をそろえて却下と言った。
どれだけやりたくないんだ、演劇
「はぁ、今のところでた意見は屋台系のものかお化け屋敷。この二つしかないね」
「まぁいいんじゃね。他も同じくらい出せばいい数になるだろ」
「そっか、じゃあもう時間も時間だし。僕たちはこの二つの案を出そうか」
僕たちは出す案を決め終わり前に向き直るその時ちょうど時間が良かったらしく、タイマーの音が鳴った。
タイマーを止め委員長が話し始める。
「これから、話し合った案を出してもらう。全て出し切ったら多数決をとってやるものを決めようと思うんだがこれでいいかな?」
その確認の声にみんなが同意を示し、案の発表が始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます