十話 友達


 男子の試合終了のブザーがなり試合が終わった。


 そして女子の番となり紬が待ってましたと言わんばかりに立ち上がる、



「いってくるよ蒼くん!! ほら瑞樹も立って!!」

「やらなきゃだめ?」

「もちろん! さぁ立って!」



 やりたくなさそうな表情の瑞樹の手をひきステージを下りていった。それと入れ替えに試合の終わった男子がステージに上がってくる。


 紬も瑞樹もいなくなってしまったから、試合の終わった誠を探してみるが、誠は友達と喋っているようだった。


 一人で座っているとそこに



「友達できたんじゃなかったのか?一人じゃねぇかよ。¥」



 とニヤニヤして先生が話しかけてきた。



「急にどうしたんですかそんなに気持ち悪い顔して。それに友達はいます、ただ多くはないですけど」



 先生は心外だなと言い放つ



「気持ち悪い顔とはなんだ、心配してきてやってんだぞ」

「そんなこと言ってサボりたいだけでしょうに」



 図星だったのか先生は少し肩をすくめながら隣に座ってきた。



「まぁ割とマジで心配してたけど楽しそうでよかったよ。あん時は手がつけられなかったからさ」

「僕だって少しは先生に感謝してるんですよ?今みたいに変に絡んでこなければね」



 互いにぐちぐちと言い合っていると、友達との話を終えた誠が近づいてきた。



「あれ、先生じゃんサボり?」

「なんでお前達はこうも俺がサボってると結論づけるんだよ!」

「だって先生蒼とゴール運んでから何もしてないじゃん。チームだって俺らが決めたし」



 誠からの正論を受け少し狼狽しながらも



「それはあれだよ生徒の自主性をだな、」

「はいはい、わかってますよ」



 誠は先生の言い訳を軽く流しこちらに話しかけてきた。



「一人にして悪かったな蒼、寂しかったか?」

「僕は子供かい? そんなことで寂しくならないよ」

「でも蒼って友達少ないのちょっと気にしてんじゃん」

「なんでそのこと!?」

「おーやっぱか。まぁ蒼は俺ら以外とあんまり話してないからな、これを機にいろんな奴に話しかけてみれば?」

「それができていたら苦労してないよ。誠はさすがというかなんというか、」



 誠はその人柄故か僕とは違って嫉妬や妬みなどという視線などは、全くと言っていいほど無い。


 やっぱりいろんな人に話しかけてみるか?いや話しかけたところで受け入れてくれるだろうか。



 何回も思うが彼女達は男子にとても人気なのだ、その彼女達がぽっとでの男と仲良くしていたら気に入らないだろう。


 それに加え自分達と仲良くしたいと言い出す、到底受け入れることができないのではないか?


「蒼が何をそんな気にしてんのかわからねぇけど、そんな気負わなくていいぞ。みんないい奴だからさ」



 誠が人気なのはこういうところなんだろうな、人が今どんな気持ちを抱いているのかを理解してくれる。


「そうだね。少し気負いすぎてるかも、......よし! 決めた! いろんな人に話しかけてみるよ誠!」

「おう頑張れ! とそろそろ女子終わりそうだな」


 誠の言葉を聞いて試合に目を向けると、紬が暴れていた。


 味方の女子からパスをもらい一人二人と抜き去り、あとはキーパーをしている女子だけという状況になっていた。



 紬がシュートを決めるのかと思ったが、紬は横にいるフリーの瑞樹にパスを出す。


 瑞樹はパスが来たことに驚いていたが足を振り上げシュートの体勢になる。


 足元に転がってきたボールへとしっかり狙いをつけて思い切り振りかぶる。



 ボールは勢いを止めることなく転がっていった。


 そう瑞樹は見事に空振り、ボールがそのままの勢いで壁にぶつかると同時に、試合終了のブザーがなった。



 瑞樹はとても恥ずかしそうに顔を俯けそれを見ていた男子はニヤニヤしてる人が多数だった。


 僕はというとすごく微笑ましい気持ちになり見ていたが、誠は耐えきれなかったのか少し噴き出していた。



「おい、誠笑うなよ」

「だってあれ、っくく、あんな綺麗に空振ることあるのかよ」

「確かに綺麗ではあったけど、てか次試合だろ? 早く行きなよ」



 僕が誠にそういうと何か思い出したかのように先生に話しかける。



「そういえば先生さっきの試合で怪我した奴がいるんだけどさ、今保健室行ってて試合できないっぽいんだよね。人数足りないんだけどどうすればいいかな?」

「そんなもん相手の人数も減らせばいいじゃねぇかよ」

「いやいや3分しか試合時間ないんだよ? 半分で交代って楽しめないじゃんか」



 このままでは平行線で話が終わらない、どうするか考えた時ふと頭にあることがよぎった。


「ねぇ先生、、」

「ダメだ」


 先生にそれについて相談しようとすると言い切る前にダメと言われてしまった。



「頼むよ先生3分だけだからさ」

「ダメだと言ったらダメだ、お前に何かあってからじゃ遅いんだぞ」

「わかってる、でも僕は今を楽しみたいんだ。それに友達を作るチャンスでしょ?」



 そういうと先生は少し考えるそぶりを見せた。



「...わかった今回だけ特別だ。だが動きすぎるなそして何かあればすぐに止めることいいな」

「ありがとう先生、誠その子の代わりに俺が出るよ」

「本当か? でも大丈夫なのかよなんか事情があるんじゃないのか?」

「何かあったらすぐに止めるし大丈夫。それに誠が言ったんだぞみんなと関われってさ」

「うーんわかった。蒼がいいっていうならいい。じゃチーム紹介するから来てくれ」



 誠は自分のチームの方に歩いていった。誠に気がついたチームメイトが誠に話しかけた。


「どうなった? やっぱ他のチームの出る人減らす?」

「いや心配ないぞ、なぜならこの水無瀬蒼が助っ人に来たからな!!」



 その言葉を聞いたチームメイトが俺を一瞥し、そのまま3人とも近づいてくる。


 その中のものすごく優しそうな男の子が話しかけてくる。



「そうか。でもいいのか? 今までなんか理由があって体育やってなかったんじゃないのか?」

「うん、まぁそうなんだけどね。先生から少しだけならって許可をもらったからさ」

「そっか! 一緒にやってくれてありがとな! 水無瀬は俺らのことよく知らないだろ? 自己紹介するよ、俺は高橋たかはし 海斗かいと。海斗でいいよ、よろしく」



 海斗くんの自己紹介が終わると次は俺の番といい背の高い人が話してくれる。



「俺は、須藤すどう 一樹かずきだ。俺も一樹でいいぜ」



 最後に少しおとなしめの子が自己紹介を始める。



「最後は僕だね、僕は上代かみしろ 双葉ふたばだよ。運動はあまり得じゃないかな。僕も上代でも双葉でもどっちでもいいよ」

「よろしく海斗くん、一樹くん、双葉くん。僕も蒼でいいよ」

「おし! 自己紹介も終わったところだし、試合するぞ!」



 誠の言葉に賛同し赤い色のビブスを着る。誠のチームは赤いビブスみたいだ。


 そのままフィールドの中に入りポジションをどうするか話していると、相手チームから話しかけられる。



「おい! 水無瀬いるじゃん! フットサルで水無瀬はずるだろ! 強すぎるって!」



 相手の言葉を鼻で笑いながら誠が答える。



「っは! そっちはサッカー部二人いるじゃねぇか。そっちのがズルだろ。こっちにサッカー経験者の水無瀬いれることは何も問題ないんじゃないんですかー?」



 誠の正論?に相手はぐぬぬと何も言い返せないでいる。


 でも確かに授業で僕がシュートを決めても何も仲間もあまり楽しくなさそうだなぁ。



「じゃあさ、それなら僕はシュート打たないよ。味方へのパス中心で戦うからさ、それならいいかな?」



 僕の言葉に相手は



「それならまぁ、てか俺も水無瀬のパス受けたーーい!!」



 彼はどうやら僕とフットサルがしたかったみたいだ。


 それに今思い出したけど、転校初日にサッカー部に勧誘してきたのも彼だったな。



 相手はもう異論はないということで、ポジション決めで話し合ってる。

 僕たちも自分たちのポジション決めについて話し合う。



「おし決まりだな、ポジション決めようぜ」

「そうだなぁ、僕は後ろにいようかなその方がパス出せるし」



 僕がそういうと、一樹くん達もポジションを決め始める



「オレは前がいいぞ、たくさん決めてやるよ」

「僕は前に出てても活躍できないだろうし、キーパーやるよ」

「そうだなぁじゃあ、俺が右やるから海斗は左頼むよそれでいい?」

「うん。それでいいよ」



 運動が得意ではないといった双葉くんはキーパーをやるつもりらしい。


 でもキーパーだけだったらあまり楽しめなさそうな気がする。



「途中で僕がキーパーするから、双葉くんは途中でフィールド出てよ」

「え? でも、」

「僕はみんなで楽しみたいんだ、もしかしたらキーパーの仕事全然ないってこともあるかもしれないし。僕が絶対後悔させないからさ、それでも嫌かな?」

「...わかったよ、途中で交代ね。よろしく蒼くん」

「うん! 頑張ろ!」



 みんなのポジションが決まったところで相手も決まったようだ。


 誠が相手に声をかけ試合開始のブザーの設定をしている。


 僕たちはそれぞれポジションにつく。



「よしそれじゃ始めるぞ!」



 その声と共に試合開始のブザーがなった。

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