六話 昼休み
四時間目の授業が終わるチャイムの音が鳴る。
「起立 礼」
その号令と共にお昼休みになり移動する生徒が多くなる。
昨日と比べ視線の数は減ってはいたが、朝のこともあり男子から視線を受けることが多くあった。
その視線で少し暗くなってしまうが、いつの間にか僕の前に来ていた紬が満面の笑みでお弁当を持っていた。
「蒼くんご飯食べよ!! ほら誠くんも机ずらして、瑞樹ちゃんも!」
紬はてきぱきと指示を出していき、あっという間に昨日と同じように机が四角形になった。
「ほらほら、食べよ!」
とても元気な紬を見ていると先ほどまでの暗い感情が嘘のように消えていく。
紬には助けられてるな昨日も今も。
「紬ありがとう」
僕のお礼の意味が分からないのだろう。なんで?という顔をしたがすぐに笑顔に戻る
「いーえ! さぁ早く食べよおなかすいちゃった!」
「そうだね、僕もおなかすいちゃった」
僕と紬の言葉を聞いて誠も小鳥遊さんも机の上にお弁当を広げ始める。
みんなでお弁当を食べ始めるとすぐに誠が話始める。
「そういえば俺ら昨日蒼にああんまり詳しく自分たちの話してないよな」
誠の唐突なその発言に紬はハッとした顔をして、小鳥遊さんはよくわかっていない感じだった。
「確かに蒼くんに私のことあんまり言ってないかも」
「だろ? 蒼俺とか紬が何の部活は言っているのか知らなかったぞ」
「確かに言ってないかも!」
紬は腕を組み考え始める。昨日の会話をがんばって思い出しているのだろう。
すこしして紬は考えるのをやめたようだ。
「うん! 思い出せない!」
ととても元気に言う。
すると誠がケラケラと笑い出し話し始める。
「そんじゃ、今のうちに蒼がわかんないことがないようにしとこうか」
「確かに! そうしよう!」
誠の提案に賛成する紬
「軽くまとめると、俺はバスケ部、そんで紬もバスケ部小鳥遊さんは確か何も入ってないんだっけか」
「ええそうね。部活には何も入っていないわね」
「やっぱりそうなんだ。昨日そんなは話聞かなかったし、昨日話した感じ部活どころじゃなさそうだったしね」
すると誠が少しわからなそうな顔をして質問してくる。
「ん? 蒼お前昨日小鳥遊さんとそんな話してたっけ?」
「あ、いやお昼の時じゃなくて昨日の帰りに小鳥遊さんと話してたんだよ」
そういうと、誠がすごく驚いた顔をして固まっていた。
するとほどなくして紬に話しかけ始める。
「なぁ紬。蒼の話聞く限りだが昨日一緒に帰って今日一緒に登校してきたってことに間違いないよな」
「うん、いままでそういう話が一切出てこなかった瑞樹ちゃんと一日でそこまで行くなんて蒼くん意外とやるね」
そう言い誠と紬は僕たちを交互に見てにやにやし始める。
「そ、そういうんじゃないからね! ほんとに! そうだよね小鳥遊さん!」
誠と紬のにやにやに耐え切れなくなった僕は小鳥遊さんに助けを求めるが、追い詰められていたのは僕だけじゃなく小鳥遊さんも同じだった。
小鳥遊さんは少し頬が赤くなっていたが僕ほど取り乱してはいなかった。
「そうね、昨日の下校も今日の登校もたまたま会ったから一緒にいただけよ」
「「たまたま、ね」」
誠と紬は見事なまでにハモリ更ににやにやとこちらを見てくる。
なんとかして話を別の方向にもっていきたいけど何かあるか、そうだ、とても不便だったから今日聞こうと思っていたことがあるじゃないか。
「あ、あのさ!」
「お、どうしたそんなでかい声出して」
「あ、いや、その、」
「んだよ、言いたいことあるなら言ってみろよ」
「さ、三人の連絡先教えてくれないかな。いやよかったらでいいんだけど。」
少し声が上擦ってはずかしくなる。その発言で先ほどまでにやにやしてた誠と紬そして小鳥遊さんまで急に無言になる。
もしかしてダメだったのかな。そんなことが頭によぎり怖くなったが、誠の笑い声でそんな心配吹き飛んだ。
「あっはっはっは、くっくっ、だめだ笑いが止まらん。ふふ」
「あははは、蒼くんそんなことで不安になっちゃったの?」
「ふふ、案外怖がりなのね水無瀬くん」
みんなが笑ったことで不安はなくなったが、僕はなんで笑われてるのかわからずに混乱してた。
「なんで笑うんだよ!」
「そりゃ蒼お前今更俺らがそんなこと嫌がると思ってんのかよ。それに俺だって後悔してたんだぜ。昨日蒼の連絡先もらっておけばよかったってさ」
「そうだよ蒼くん! そんなこと全然気にすることやないよ!」
「ええそうね。昨日今日と一緒にいたのだから心配になる必要なんてないわよ」
よかった。みんなが優しくて。やっぱりここに来てよかった、心の底からそう思う。
「中学ではその、友達なんてできなかったから、、ありがとう。そしてもう一ついいかな」
「おう、なんだ」
「連絡先の追加ってどうすればいいのかな?」
「っぷ、ふふ」
「あっまた笑った!」
「いや悪いほんとに悪い。ふふふ。はぁ~ふぅ~よしもう大丈夫だ。蒼スマホ出してくれ」
誠は申し訳なさそうにしながらも笑うことを我慢するので精一杯のようだった。
誠に言われるがままにスマホを操作しカメラを起動し、誠が自分のスマホに移したQPコードを読み取らせてくれる。
紬と小鳥遊さんもそれと同じことをして三人との連絡先交換は終わった。
「これでできたな。ほら試しになんか送ってみろよ蒼。」
僕は母さんしかいなかった連絡先に、誠たちがいることにものすごく感動を覚えた。
そして誠に言われた通り何か送ろうとしたが何を送ればいいかわからず、無難に「よろしく」と打ち込み送る。紬と小鳥遊さんにも同じ文を送ると。
誠から「おう。よろしく。」紬から「よろしくね!」小鳥遊さんから「これからよろしくね。」と返信が来た。
「なんか本人が目の前にいて送るの少し恥ずかしいね」
「そうだな。まぁ何はともあれこれからもよろしくな蒼」
「うん、よろしく。みんな」
「あ、そういえば二人って家どっちなの? 僕は小鳥遊さんの方向と同じだったんだけど、紬とか誠とかどこなのかなって思ったんだけど」
「あー蒼の家そっちか、俺と紬がおんなじ方向なんだけど小鳥遊さんの家の方とは逆なんだよな」
やはりというか同じバスケ部ということで誠と紬は結構仲がいいみたいだ。
「そっかそれは残念だな、部活ない日一緒に帰ろうとか思ってたんだけど。帰れないみたいだね」
「うーんまぁ超遠回りにはなるが帰れないことはないぞ」
「そこまで迷惑かけられないよ」
「そっか。ま、どっか遊びにいこうぜそれでチャラだろ」
「そうだね、この辺知ってる人がいたら心強いよ」
誠は時計を見るそぶりをして、驚きで顔を染める。
「やべぇ話すことに夢中になっててもうあんま時間ねぇぞ!!」
誠の一言にみんなで時計を見ると残りの昼休みの時間は10分を切っていた。
僕たちは急いでお弁当を食べ、昼休みが終わるまで談笑していた。
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