110ストライク お金の稼ぎ方
貧民街を後にして一度スーザンの家に戻った俺たちは、簡単な準備を終えてベスボル協会を目指す事に。
もちろん、目的はチーム登録について詳しく確認する為である。シルビアからはある程度の仕組みは聞いているが、やっぱり直接確認しておきたいと思ったからだけど、俺ってこんなに心配性だったかなと内心で苦笑いする。
それとミアには魔力共生を早く習得してほしいので、スーザン宅で残って訓練に勤しんでもらう事にした。彼女もそれを望んでいたし、ヒルモネの言う通り彼女は筋がいいらしくて神眼で見てもどんどん扱いが上手くなっていってる事がわかった。
迷ったのは教育係としてオーウェンを側につけるかどうかだったが、ウェルさんが一緒に見てくれるとの事だったので安心して任せる事にした。
こうして、俺とシルビアはアネモスのベスボル協会を目指して出発する。
「登録料100万クレスか……どうにかならないもんかなぁ〜」
歩きながらそうぼやくと、その横で歩いていたシルビアが真面目な顔を俺に向ける。
「どうかしらねぇ。全部はもちろんだけど、一部でも登録料を免除されたなんて話、これまで聞いた事ないし。それにうちもあくまでベスボル用品を扱う中小企業だから、さすがにその金額をおいそれとは出せないしね。」
その言葉を聞いて大きなため息が自然と出た。
100万クレス……元いた世界の日本円に換算して約1000万円ほどの大金。そんなお金をどう準備すればいいんだろうか。
この世界の人たち、特に一般市民の毎月の稼ぎは2万クレス程度で、日本人の一般的な月給と同じか少し少ないくらいだ。そこから生活費やらなんやらが引かれて手元に残るのは1000クレス、日本円にして約10000円ほど。
毎月節約と貯金しても年間で12万円……1000万円貯めるには……
そこまで考えたところで、再び大きなため息が出てしまった。普通に貯めていたら何年もかかる事は目に見えている。
もちろん、もっと効率よく稼ぐ方法はあるにはある。俺が選択できる唯一の職業……そう、冒険者としての仕事である。
狩人を生業とするイクシード家に生まれた俺は、ついこの間まで冒険者として鍛錬していた。もちろん、父ジルベルトと兄アルと一緒にやってきた事もあってそのノウハウは折り込み済みだ。
冒険者に対する依頼内容は薬草採集とか悪人の捕縛とか何かと広範囲に及ぶが、イクシード家への依頼は魔物の討伐がメイン。確かに魔物討伐は命を賭ける仕事だが、リスクが高い分ハイリターンな依頼が多いので、効率性を考えると一攫千金狙いで冒険者業をやるのがベストな選択肢かもしれない。
そして何より、俺の冒険者としての資格に期限はない。
イクシード家は少し特別な家柄だから冒険者ギルドからいくつかの優待を受けていて、その中の1つが資格の有効期間だ。普通の冒険者と違ってイクシード家は無期限なので、いつでも冒険者ギルドに行けば活動を再開できるのだ。
だが……
(普通に働くよりも効率はいいけどなぁ〜。この時期だとあまりでかい仕事はないんだよなぁ。)
もし仮に魔物の討伐メインに活動するとしても、報酬が高い依頼がそう何度も来る事はない。
基本的に魔物討伐の報酬はその対象の脅威度によって決められる為、一気に稼ごうと思うならば最低でもAランク以上の魔物を討伐しないといけない。
だが、そんな高ランクの魔物がほいほいと現れて被害を及ぼす事はなく、大抵は害獣の駆除がほとんどである。
「ソフィア、あんた冒険者として稼ぐ気なの?」
「……え?よくわかったな。」
珍しく察しがいいシルビアに驚いたが、どう思うか聞いてみようと考えた俺は思い切って相談してみる事にする。
「冒険者ギルドの依頼の方が、普通に働くよりか効率は良いと思うんだよな。俺、Aランクくらいなら結構いけるし……」
「あ……あんた、しれっと恐ろしい事言うわね。」
「そうかな?ジルやアルと一緒にいたら、Aランクの魔物の相手なんてザラだけど……」
「世間知らずってのはまさにあんたの事を言うのね。いい?魔物のランクって冒険者ランクを基準に考えられてるのよ。」
確かにジルたちについて行くだけだったから、冒険者について俺は詳しくは知らない。それを察してか、シルビアは改めて冒険者の仕組みについて教えてくれた。
まず冒険者とギルドの関係性だ。
これはさっきも少し口述したが、冒険者ギルドが貴族や市民から受け付けた依頼を所属する冒険者に委託する事で成り立っている。
依頼を受けたギルドはその内容に応じて報酬金額を定めて冒険者へ斡旋し、冒険者は自分の力量に応じた依頼を受けていく。
その達成の判断基準は依頼の種類によって違うが、素材の回収の場合はその素材を提出、調査の場合は情報を報告、討伐の場合は指定した討伐部位の回収を行い、素材や情報の質によっては報酬が上乗せされたり、次回以降、その冒険者を指名したりすることもあるそうだ。
「あとは報酬を支払う際には税金分を天引きして、それを領主に納めるまでがギルドの仕事ね。」
聞けば、税金は設定した報酬に応じた割合が決められているそうだ。要は高報酬の場合はその分税金も高くなる訳だ。
天引き……確かに以前、ジルベルトがそんな事をぼやいていた気がするな。
でも、早くチーム登録資金を貯めたい俺たちにとってはけっこう死活問題かも……
そう内心で頭を悩ませつつ、俺はシルビアとベスボル協会を目指すのであった。
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