第1話 おともだち #2
小さい頃から自己表現や喋ること、友達を作るのが苦手だった。何かとお母さんについてまわっては後ろに隠れやり過ごして来た。
そんな私を気にしてか両親はよく発達が遅いのかなどと要らぬ心配をして病院を回ったようだ。
なんの検査を受けようと結果は異常なし。そう。私は至って健康優良児でこの引っ込み思案はただの性格だったのだ。
ボイルされたウインターをポキッとつまむ。
「私だって、なりたくてこうなった訳じゃ……。」
はぁ、と溜息をつき頬杖をつく。あれだけ楽しみにしていた韓ドラも今ではモノクロのように瞳に映る。キラキラした王子様も、優しいお友達も、人気者のヒロインも全部棒人間が動いているような感覚だ。
いつからこの引き篭もりは始まったのだろうと首を傾げる。いや、始まったのではない。生まれつきこういう運命だったのかもしれない。ドラマを見ている私のように、この世界から1歩置いてきぼりにされた傍観者だ。
次は半熟の目玉焼きに手をつける。
「……。」
いつもなら醤油か塩かで悩む目玉焼きすらどうでも良く感じる。パクッと食べても実に味気がない。
私が現在置かれている状況は未だかつてなく最悪な状態である。
小中と怖くて学校に行けずのらりくらりと義務教育を交わし不登校児として生きてきた。幾度顔も知らぬ担任が訪れて来ただろう。幾度知らないクラスメイトがプリントを届けに来ただろう。
そんな彼らを私は、2階の自室に篭もり窓からじっと眺めるだけだった。
しかし、そうのらりくらり交わせるはずも無いのがこの面倒くさいリタイアが出来ない「人生」だ。
両親はとても寛大で、私が学校に行かないことを許してくれた。
_____そう、高校入学までは。
ある日いつものように両親と私3人で食卓を囲んでいる時、
「大事な話がある。」
とお母さんは告げた。続いてお父さんが、
「高校には行きなさい。」
と私に優しく諭した。その言葉にまるで雷にでも打たれたような衝撃を受けた。
今回の母の大事な話がある、は正しくこれと同じだ。
小森美鈴、17歳。人生のピンチである。
頭が軽くパニックになりガガガっとおにぎりを口にほうばる。
「うぅ……。別に、高校も通信制でたまに頑張って通ってるし……。ほかに何大事な話があるの……。」
しょんぼりしながら食べ終わった食器を持ってシンクへ運ぶ。
「よいっしょ……あっ!?」
まさかのモコモコスリッパが仇となり滑り視界が上を向く。お皿がゆっくり宙を舞う。ああ、転ぶ時ってすろーもーしょんにな……
ドスーン!ガシャン!
「いてて。ん、ガシャン……?」
振り返るとそこには4等分に割れたお皿があった。しかもこれは……母のお気に入りだ。
「うわぁーん!!いい事ないし、どうしたらいいのおおおお!」
メソメソしながら食器の欠片を集めた。
運命の大切な話まであと数時間。
ちょこれーと解答論 甘噛すもも @amagamisumomo
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