第17話 静かなる闘志

キヌ「…そうかい?ありがとうね」


不意にキャベツ太郎に褒められ、キヌは少し照れくさくなって微笑みました。


猿「あー…何かここ空気甘ったるいなぁ…やだやだ。ちょっと近くの森行ってくるわ」


猿はシッシッとでも言うように手を振り、森の方へ走って行きました。


村長「…お前はどう思う?」


猿と入れ違いにやってきた村長は、キャベツ太郎に鬼の歴史について尋ねました。


キャベツ太郎「鬼が…元々は人間で、しかもそれが今の上様の祖先がかけた呪い…というのは分かりました。けれど、オラ達がずっと語り継がれてきた話とは全く別の話過ぎて…正直、まだ理解が追いついていないというか…」


村長「だが、それが真実だ。国の上の奴らが…人間を更に人智を超えたものにする為に…。別の国へと戦争を仕掛ける為に。能力を妬むが故に。…我らは人間から歪められた存在。…長い年月はもう、我らを人間には戻れなくしてしまった」


深い憎しみと悲しみを滲ませる様に響く声はキャベツ太郎の心をギュッと締め付けた。


キャベツ太郎「…キヌさん、村長。このままでいいんですか?」


キヌ「…え?」


村長「このままでいい…とはどういう意味だ」


俯(ウツム)いたキャベツ太郎の表情はわからないが、地面にポタポタと落ちる雫で、泣いているのがわかる…。


キヌ「急に…どうしたんだい?」


キャベツ太郎「オラは…こんなのあまりにも不公平だと思う!被害を受けたのは鬼達だ!勝手に体を作り変えられて、虐げられて、追いやられて!このままでいいんですか!」


勢い良く顔を上げたキャベツ太郎の顔はとても見れたものではありませんでしたが、漢の顔付きをしていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る