第14話 相手はモテ男

優也と颯。二人が私のことを好きだと言ったあの日から2日。どこからかその情報が噂で回っているようだった。

「幼なじみってだけでしょ?」

「優也と颯がちょっとかわいそーになってくるわ」

私が廊下を歩くたびに、そんな声が聞こえてきた。そりゃそうだ。相手はファンクラブがあるほどのモテ男。私が釣り合っていないことくらい、私にだって分かってる。

私が周りの言葉に流されていた、そのときだった。

「ねえ、あんた、山田菜緒だよね?」

隣のクラスの女の子たちにそう話しかけられた。彼女は確か自称ファンクラブの会長。ファンクラブの会員でさえ恐れる、ちょっとめんどくさい存在。

「そう...だけど」

私が恐る恐る返事をすると、彼女は、はぁと重たいため息をついた。

「あんたさ、自分の立場わかってる?わかってんならさっさと引きなさいよ。」

私が何も言い返せないでいると、彼女は一層強さの増した言葉をぶつけた。

「どうせ媚び売ってるだけなんでしょ?恋心なんてないんだから、もう二人に近付かないでくんない?」

彼女の言っていることはでたらめだ。でも、言い返すなんて私には出来ない。

「ねぇ聞いてんの?なんか言いなさいよ。」

彼女の言葉が強まるたびに、私の鼓動が大きくなっていく。段々と自分の周りのものが、遠い存在に思えてくる。聞こえる笑い声が、全て私に向けられたもののように聞こえる。

「なんか言えって言ってんだけど。」

彼女に突き飛ばされて、後ろによろけた拍子に、私は逃げるように駆け出した。

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