第14話 相手はモテ男
優也と颯。二人が私のことを好きだと言ったあの日から2日。どこからかその情報が噂で回っているようだった。
「幼なじみってだけでしょ?」
「優也と颯がちょっとかわいそーになってくるわ」
私が廊下を歩くたびに、そんな声が聞こえてきた。そりゃそうだ。相手はファンクラブがあるほどのモテ男。私が釣り合っていないことくらい、私にだって分かってる。
私が周りの言葉に流されていた、そのときだった。
「ねえ、あんた、山田菜緒だよね?」
隣のクラスの女の子たちにそう話しかけられた。彼女は確か自称ファンクラブの会長。ファンクラブの会員でさえ恐れる、ちょっとめんどくさい存在。
「そう...だけど」
私が恐る恐る返事をすると、彼女は、はぁと重たいため息をついた。
「あんたさ、自分の立場わかってる?わかってんならさっさと引きなさいよ。」
私が何も言い返せないでいると、彼女は一層強さの増した言葉をぶつけた。
「どうせ媚び売ってるだけなんでしょ?恋心なんてないんだから、もう二人に近付かないでくんない?」
彼女の言っていることはでたらめだ。でも、言い返すなんて私には出来ない。
「ねぇ聞いてんの?なんか言いなさいよ。」
彼女の言葉が強まるたびに、私の鼓動が大きくなっていく。段々と自分の周りのものが、遠い存在に思えてくる。聞こえる笑い声が、全て私に向けられたもののように聞こえる。
「なんか言えって言ってんだけど。」
彼女に突き飛ばされて、後ろによろけた拍子に、私は逃げるように駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます