第8話 二人はライバル
「次、山田」
私は先生からテストを受け取ると、思わず点数を二度見してしまった。
「27点…」
「あれ?赤点じゃ〜ん」
颯が私のテストを覗き込んでそう言った。
「ちょっと〜見ないでよ〜」
「大丈夫、俺も赤点」
18点と書かれたテストを堂々と見せる颯に、私は思わず吹き出してしまった。
「ちょ、笑うなよ〜」
「ごめんごめん」
「おい、青木、山田、理系でも日本史は、共通テストで使うからしっかり復習しておくように」
「はい!」
私達は思わず背筋を伸ばした。周りが笑いだしたのにつられて、私達も笑い出す。
「みんなもしっかり復習するように。じゃあ号令」
「気をつけ、礼」
「ありがとうございました」
号令と共にチャイムが鳴ると、優也と颯は部活に向かって駆け出した。
「あの2人、やっぱライバルだよな〜」
周りからそんな声が聞こえる。
優也と颯はサッカー部のチームメイトであり、よきライバルでもある。今は夏の大会でエースナンバーを背負うために、バチバチしているらしい。1年、2年のときはレギュラー争い、3年になったらエース争い。普段はすごく仲がいいけど、部活になると、2人が生み出す空気感はものすごく重くなるんだとか。そういえばこの前、生徒会長になるのは俺だ、なんて言ってバチバチしてたな。結局、どっちも生徒会長になれなくて、2人とも沈んだ顔してたっけ。まあ、何かに一生懸命になれるところ、私も見習わなくちゃな〜。
「山田〜部活行こうぜ〜」
2人の姿にしみじみとしていると、後ろからやたらと聞き覚えのある声がした。
「今日、私、清掃当番なんだよ」
振り返ると、声の主はやっぱり尚希。小学校4年生くらいの頃に、近所に引っ越してきた幼なじみ。昔からよく優也の家で、私と尚希と優也で遊んでいた。
「清掃頑張れよ〜」
尚希はそう言うと、ニカッと笑って部活へ向かった。私は黒板消しを2つ持って、窓の外ではたきながら、サッカー部の様子をぼーっと眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます