第4話 優也がモテる理由


私が電話から帰ると優也はキッチンに立ち、玉ねぎを刻んでいた。

「ねぇ優也〜玉ねぎ切ってるでしょ〜」

「目痛い?」

「当たり前じゃん、どうしてそんな平気な顔してんの」

「う〜ん、なんか慣れた?」

「え?なにそれ、玉ねぎに慣れるとかある?」

優也が私を見て鼻で笑った。私はまた唇を尖らせた。

「今日の夕飯はなんですかー?」

あまりにも子供らしい声が出て、自分でも驚く。優也はまた頬を緩ませる。

「なーんでしょう」

私に合わせたのか優也も無邪気な声を出す。

「みじん切りの玉ねぎ…挽き肉…そして卵…まさか!ハンバーグ!?」

「せいかーい!だけど間違い」

「え〜なにそれ〜」

「じゃあ、お手伝いしてもらっていいすか?」

「なんでしょう」

「今から空気を抜く作業をしまーす」

「へい!」

手と肉がぶつかるペタペタという音以外の音はしばらく聞こえなかった。

「よしっ出来た。フライパンに並べちゃっていい?」

「いや、その前に中にチーズを入れて」

「は!チーズインハンバーグ!?」

「大正解」

「え〜!やった!早く出来ないかな〜」

フライパンの油が跳ねる音がする。キッチンに立つ優也を、リビングから見て優也がモテる理由が分かった気がした。

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