第6話 決意の少年
僕はもう戦わない。戦わないんだ。
ドスン、ドスンという足音が、徐々に近づいてくる。その時だった。
ゴーっというエンジンが吹く音が聞こえてきて、真上の空を見上げた。
「あれは飛行機……自衛隊の戦闘機か?」
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「こちら……目黒中尉。目標を目視で確認!
いつでも攻撃可能です!」
「よぉし、空対空ミサイル、一斉射撃だ!
外すなよ。我々に日本の運命が掛かっているんだ。失敗は許されないぞ!」
「了解。全機、ミサイル斉射!」
巨体に向かう数十の戦闘機から、ミサイルが
一斉に射撃される。ミサイルは噴煙を上げながら目標に向かい、四方八方から放射線状に
進んで行った。
やがて目標に接近し、無数の爆煙を上げた。
「ミサイル、目標にほぼ命中…うわぁぁぁ!」
「こちら管制部、どうした?応答せよ!」
「敵の攻撃が…火が…あぁぁ…ぁ…ズズ…」
「応答せよ!敵の状態は?撃破したのか?」
途端に、戦闘機からの通信が途絶えた。
「ダメです、全機、通信途絶!敵性未確認生物に、全て撃滅された模様です!」
「くっ……化け物か!仕方ない、総員、退避だ!
民間人を救出しながら、戦線を下げろ!」
レーダー再起動!敵性未確認怪獣、この基地まで距離7600メートル!
進行速度、約150メートル毎秒!ここに向かって来ます!
「なんで速さだ、あの巨体で。一体なんなんだ、あの怪獣は……。もう我々も、お終いか。」
「何を弱気になってるんですか!まだ武器はあります!陸上自衛隊の戦車大隊が、怪獣に向かって進行中だそうです!」
「無駄だ……47機の戦闘機が、一瞬にして前滅だぞ。もう我々に、勝機はないんだ…」
「敵の進行方向、反転!その進行方向に、超高エネルギー反応を確認!」
「まさか…二体目の怪獣?」
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目に映ったのは、最早清々しいまであるほどの、人々の抵抗の虚しさを現す情景だった。
ミサイルの斉射を受け、爆風が巨体を取り巻いた。だがその3秒後、大きく口を開け、火炎を放射した状態で首を回転させ、ことごとく戦闘機を焼き払った。
戦闘機は炎に溶けたり、空中で爆発したり、推力を失い地上に墜落したりした。自衛隊の決死の抵抗も、簡単に破られてしまった。
「どうして……みんな、そんなに戦えるんだ。
でももういい。僕はもう、戦わないんだ…。」
決戦兵器は地面に倒れ伏したままだ。
敵が近づいてくる。戦闘機を堕とした次は、僕だ。
その時だった。いつも聞き慣れた声が、機体を通じて耳に響く。彼女だけじゃない。
多くの人々が、叫んで助けを求めていた。
「助けて!頑張れ!正義のヒーロー!」
結衣が…どうしてここに?
足音が轟音に変わる。地面が振動し始めた。
敵は、またもや大きく口を開き、息を吸い始めた。
「危ない!」
豆のような大きさに見える人々を、巨体な手で被せて守った。
「ぐっっ…熱い!」
身体が焼けていくようだ……でも…、結衣を、守らなくちゃ!
耐える。ただ耐える。熱さと痛みで体が壊れそうだ。だけど、ここで僕が逃げたら、結衣が死んじゃうんだ!結衣は、こんな情けない僕に、優しくしてくれた。友達でいてくれた。
「だから、僕が守らなくちゃいけないんだ!」
アルレシオンの目が、紅く光る。
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