第3話 予兆

「僕が…どうやって?」


「コックピットに乗ってみれば分かる。四肢と体をバックカバーに装着すれば、自分の肉体を動かすような感覚で自在に動かせるよ。そのせいで、痛覚も共有してしまうけどね。」


「あ、あの、そもそもこのロボットって、なんなんですか?それにどうして僕が…」


「言っただろう。君は選ばれし者だからだ。

そしてこのアルレシオンは、人類にとって、地球を襲来する怪獣たちに対抗できる唯一の手段。ここの地下空間に、はるか昔から存在する、最強の人型兵器だ。」


「選ばれたからって、なんで選ばれたかって聞いているんです。」


「運命だからとしか言えないね。私はただの代弁者で、事の全容を把握している訳ではないんだよ。」


「そう…なんですか。えと…じゃあ、あの怪獣は?多分、隕石から現れたんですよね?」


「そうだ。奴を含めて。これから地球に、13体の敵が襲う。それと戦うのは、全人類と決戦兵器アルレシオン。操るのは、君自身だ。」


「それに私は、君にこの地球を救うんだ、なんて強要はしない。僕は運命を伝えに来ただけで、それだけが、私の役割なんだ。」


彼は、真剣な面持ちである。


「別に、君はこれに乗らなくてもいいんだよ。

拒絶をしたら地球と共に滅びるだけだ。君がそれを望むなら、拒否しても構わないと思う。」


「ただ、人類の運命は、君に託されている。その事を、忘れないで欲しい」


男はそう言って、まるで霧のように消えていった。


「え、どうしたんですか?待ってください!」


僕の静止は聞かず、男はグラフィックみたいに消えていった。」


「やるしかない...やってみるか!」


僕は走り出した。あの人型の方ロボットの、腹部あたりを目指して。


なにしろこの巨体だから、かなり距離がある。静寂な空間の中に、足音と息の音が

遠くまで伝わっていく。


少し走った後、それらしき部分を見つけた。


「これがコックピットだな...。」


掛けてあった梯子を登る。コッコッコッと、伝う音が響く。ようやく登りきった。


そこには、球体状なコックピットの扉が、開いたままになっていた。


「僕がやるんだ...やってやる!」


今、僕の感情は、皆を守らなくちゃという正義感や使命感ではなく、好奇心や直感的なものがあった。誰かに言われたのでも、誰かの為にでも、無い。


自分自身が、こいつに乗りたいと言っているような感触だった。


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