第4話 好きの瞬間
これは私が小学生の時の話。
ユウの事を好きになるまでの、過去の話だ。
今でも覚えてる。
小学生の頃、最初の三年間のイメージは、暗いイメージだった。
特に友達が何かに熱中している時、羨ましそうにそれを見つめていたことを覚えている。
別に、ユウに友達がいなかったわけではないため、友人関係は心配していなかった。
けど、何かが欲しくて、でも何もせず自分の殻に閉じこもる姿を何度も見てきた。
そんな彼を見て、私は手を掴んだ。
何が欲しいのか、心が読める訳でもないから分からなかった。
(頑なに本人から教えてもらえもしなかったから、マジになって私の宝物も見せたこともあったっけ)
けど、興味を示さないから、欲しいものは物じゃないのかもって、後で思うようになった。
それからは……。
「この学校、幽霊でるんだって」
「幽霊? そんなのいるわけ……」
「なんで決めつけるの? いたらマジすごくない! 夜にさ、こっそり学校行って確かめようよ!」
「夜は危ないよ。……そんなに興味あるの?」
「だって誰も見たことがないんだよ? それってさ、マジマロンじゃん!」
「もしかして、ロマンって言いたいの?」
「そう! それ!」
あの時、微かにだけど楽しそうな顔してたのを覚えてる。
私は彼の手を繋いで引っ張っていった。
夜に学校へ忍び込もうとしたときは、流石に両親に怒られたけど、それでも私は彼の隣で引っ張っていった。
一緒にいる時間は多くなり、その時間は終わってほしくないと思うほどに、大切になっていった。
一緒にいると、とても楽しい。
ユウの笑顔が増えてきた時は、とても嬉しかった。
幽霊の話しから、不思議な現象や物事に興味を示すことが多くなり、図書館に行くことが多かった。
「灯、この都市伝説もおもしろいよ」
「とおりゃんせ? って何?」
「歌らしいけど……。分かんない」
耳元で楽しそうに話しているのが伝わる。
このときに、なんとなくユウが求めていたものが、熱中できるものだと気づいた。
そして私は、彼の楽しそうな姿を見ていき、いつの間にか好きになっていたのだ。
試しに、こういった質問をしたことがある。
「ねぇ、ユウは好きな人いる?」
「いるよ?」
「えっ! だ、だれ?」
「えっとね、灯!」
あの時は本当に嬉しく顔が真っ赤になっていたが、続いた言葉で落とされる。
「あとはね、大くんでしょ? 道成くんでしょ? 先生も優しくて好きだし」
「え、そういういみじゃ……」
やっぱり友達としてしか見られてないんだなって、落ち込んだ。
でも、最初に名前が出たことから、大切に思ってくれていると考えて、それで満足した。
しかし、まだ話は続き、今度は落とした所から上げてくる。
「でも一番は、灯!」
「え?」
あの時は、理由を聞きそびれてユウはどっかに行っちゃったけど、あの時は呆然と立ち尽くしてた。
でもその好意が、勘違いだったと思う日が訪れる。
それは、修学旅行のあった日だった。
遊園地に行ったあの時、私は物凄く楽しみにしていた。
一緒の班だし、回る予定だったのだが、彼は少し避けるようになった。
理由は分からなかった。
ただ、一日目はどうもなく済んだはずだった。
なのにも関わらず、一緒の班の他の女子と話したり、男友達と話したりと途中から私と話すのをためらっていた。
なぜなのかは教えてくれなかったけど、今なら分かるかもしれない。
「もしかしてさ、あの時は意識してくれてたの?」
「修学旅行の時か? そう……だな。上の学年上がるに連れてな。いつも一緒にいる分分かりにくいんだけど、近づきたい気持ちはあったんだけどな〜」
意識してくれていたことを知って安心する。
そんな素振り無かったとユウは話すけれど、そんなことはない。
だって、恥ずかしいくらい手を繋いでいるときが多かったから。
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